臨床麻酔学会ではレミフェンタニルに関する一般演題の座長を担当させていただいた。演題の中から最近の話題を紹介してみる。
まず覚醒時にも少量のレミフェンタニルを持続投与するという話題。 麻酔終了後一般的にはレミフェンタニルはoffとするのが一般的だが、他のオピオイドを併用していないと急速に作用が切れすぎるために、バッキングやそれによる血圧上昇などを経験することが多い。特にスガマデックスを使用するときは注意が必要だ。そこで少量のレミフェンタニルを継続するという試みがこれまでに行われてきた。 文献としては例えば、 Targeting smooth emergence: the effect site concentration of remifentanil for preventing cough during emergence during propofol-remifentanil anaesthesia for thyroid surgery. がある。 効果としてはこの文献のように咳を防止したり、血圧上昇を防ぐことから、耳鼻科の手術などでの試みが多い。 データはまだないかもしれないが、シバリングも予防できる可能性がある。 一般演題では ひとつ(P2-51-3)は、耳鼻科手術で術中はレミフェンタニルを0.1-0.3μg/kg/minを使用して手術終了後は0.1μg/kg/minとして抜管している。対照群がないが覚醒時の血圧上昇や患者の体動を防いだとしている。 もうひとつ(P2-51-4)はもう少し緻密にシミュレーションで適切なレミフェンタニル濃度を検討し、血圧上昇を防ぐには1.5ng/mlが必要としてる。手術終了後の用量と一定にしても術中の維持量によって抜管時のレミフェンタニル濃度は異なるので将来的にはTCI投与が必要なのかもしれない。 ということで術中の維持量にもよるが手術終了後はレミフェンタニルの投与速度を0.05-0.1μg/kg/minを維持することで覚醒時の患者の咳込みや血圧上昇を抑制しスムースな覚醒を得ることが可能と考えられる。シミュレーションでは効果部位濃度1.5ng/mlが目安となる。フェンタニルを併用している場合はその分減量が必要になるだろう。 ▲
by yamorimo
| 2010-11-23 23:52
| 麻酔
麻薬の不正使用というのは散発的には問題であったようですが、今回派手に表に出てしまいました。
対策としてはお互い気を付けるということになるのでしょうか?本数は管理されているし、大学病院なら研修医などもいるでしょうからそうそう不正はできないと思うのですが、、 ▲
by yamorimo
| 2010-11-18 23:40
| その他
3rd World Congress of Total Intravenous Anaesthesia and Target Controlled Infusionの抄録締め切りが延長されている。ぎりぎりで抄録を出したと思ったら締め切り延長のメールが届いた。
3rd World Congress of Total Intravenous Anaesthesia and Target Controlled Infusion, Singapore, 31 March – 2 April, 2011 Abstract Deadline Extended to Tuesday, December 7, 2010 Due to a high level of interest from participants, we are pleased to announce that the abstract submission deadline has been extended to Tuesday, December 7, 2010. Participants are invited to submit abstracts on various aspects of anaesthesia and intensive care, including: Analgo Sedation in ICU, Frontiers in Anxiolysis, Monitored Anaesthesia Care and Pediatric Sedation. ↘ View abstract topics http://cts.vresp.com/c/?KenesInternationalTI/2aef27e750/f84d8f2511/2a53215689 ↘ Submit your abstract online http://cts.vresp.com/c/?KenesInternationalTI/2aef27e750/f84d8f2511/6d50f9a1cc Preliminary Program Updated Online TIVA-TCI will feature an advanced and interactive scientific program, with debates, hand-on practical workshops, ‘Meet the Expert’ sessions and lectures led by internationally acclaimed anaesthesiology experts. ↘ View the updated preliminary program here http://cts.vresp.com/c/?KenesInternationalTI/2aef27e750/f84d8f2511/eeb6804c5b We look forward to welcoming you to Singapore! www.kenes.com/tiva-tci Congress Secretariat: Kenes International 1-3 Rue de Chantepoulet PO Box 1726 CH-1211, Geneva 1 Switzerland Tel: + 41 22 908 0488 Fax: + 41 22 906 9140 Email: tiva-tci@kenes.com ▲
by yamorimo
| 2010-11-16 00:35
| 麻酔
今回の臨床麻酔学会で印象的だったのは何人かの先生といろいろな場面でご一緒できたということである。
神経ブロック、DAM、超音波ガイド下中心静脈穿刺、一般演題などで、どうせ徳島まで来たからにはできるだけ多くのことを吸収して帰ろうという向学心を持った先生方とお会いすることができたのが今回の収穫である。また私自身いろいろな場所で呼び止められ質問を受けた。なかなかよいお答えができない自分が残念ではあるが、非常によいことだと思っている。 うちの先生にはいつも言っているのだが、例えば10年目の先生が長年かけて身につけたベクロニウムの使い方とネオスチグミンを使った拮抗の経験は、ロクロニウムとスガマデックスの登場で必要なくなってしまったのである。今では初期研修医でも失敗なく筋弛緩薬を使用することができる。レミフェンタニルと併用すればセボフルラン麻酔もほとんど考えることはない。硬膜外をやめてしまえば、施設で統一したレシピでiv-PCAを行うことになる。これは医療制度の違いで、高価なスガマデックスとレミフェンタニルが自由に使える日本での特殊な状況とも考えることができる。 そんな中で麻酔専門医として何を目指すのかはしっかり考えていかないと、もう必要ないよということにもなりかねない。ランチョンのコンセブトである「TIVAは麻酔科医を育てる麻酔法である」もそんな気持ちがこめられている。日本の麻酔科医の将来への懸念を仲間内で話す中で、大丈夫という気持ちもしてきたここ数日である。 ▲
by yamorimo
| 2010-11-14 23:00
| 麻酔
今回ソノサイトさんからブースでの講演を依頼されたがいろいろ考えてTAPブロックの話をさせていただいた。
四肢のブロックの適応は主として整形外科領域になるため施設によっては特に大学病院では症例が少ないという声もある。その点TAPブロックは成人の腹部手術から小児のソケイヘルニアなどまで適応の幅は広くマスターすれば大きな武器になる。 まず、成人の腹腔鏡下手術などから始めてみるとよいだろう。ソケイヘルニアなどでは腸骨ソケイ、腸骨下腹神経ブロックの適応だが、すべてTAPブロックで代用可能である。まず標準的なTAPブロックで手技を固めてからsubcostal TAPブロックや腸骨ソケイ神経ブロック、さらに小児へと応用していけばよい。 講義の内容を再編集してアップしたので参考にしていただきたい。あくまで自分の経験に基づいた意見と思って頂きたい。 さてここまでは前振りでyshiba先生から面白い動画をご紹介頂いた。腹腔鏡で観察しながらTAPブロックを行ったという動画みたいである。 ▲
by yamorimo
| 2010-11-14 18:18
| PNB
今回Sanuki先生とはご一緒した時間が長かったためか2人の重複が多い。Sanuki先生の紹介されていたDragerのハロタンの気化器は当然チェックしていた。
![]() この気化器が付いている麻酔器を自分は知っているのだが、さすがに気化器自体は使ったことはない。この気化器で注目したいのは温度計が付いていることと、温度による補正の線が入っていることである。現在の気化器では室温を考慮する必要はないが、当時の気化器では室温を確認しながら自分で温度補正をしないといけなかったのだろう。当然ガスモニタもないことを考えると当時の麻酔の困難さが理解できる。 世の中的にはより安全に確実にという方向になっていくわけだが、そこに甘えてはいけないよというのが私の迷言「TIVAは麻酔科医を育てる麻酔法である」の真意である。このコンセプトで吸入麻酔薬がTIVAに対抗するには低流量麻酔に向かうしかないと思っている。 ▲
by yamorimo
| 2010-11-12 23:30
| 麻酔
先日yshiba先生から超音波ガイド下鎖骨下(腋窩)静脈穿刺のお手本動画を提供して頂いた。
この中で、カテーテル挿入後に超音波で内頸静脈内を観察して頭側に向かって入っていないことを確認する部分が入っている。 この方法は自分でもずっと実践しているのだが、使用している超音波装置によっては視認性が悪くなかなか分からない。 たとえばこんな感じでみえる。 ![]() 疑わしいときには、少しカテを動かしてみるとよく分かる。もう一つは、注射器で生理食塩水10mlくらいを注入してみる。微量の空気が入っているくらいが視認性がよい(TEEをお使いの先生なら分かるハズ)。 頭側に向かっているときは透視下で作業するのが確実だがちょっと面倒かもしれない。そこでカテを10cm弱まで抜いてきて、カテーテルだけ進めるとうまく心臓に向かうことが多い。うまくいったと思ったらまた超音波で確認する。 この方法は外頸からカテを挿入する際にも有効である。もちろんうまくいかなくても責任は持てないのであくまで自己責任でお願いします。 ▲
by yamorimo
| 2010-11-12 23:14
| 中心静脈穿刺
Maintenence anaesthetics during remifentanil-based anaesthesia might affects postoperative pain control after breast cancer surgery
British Journal of Anaesthesia 2010 臨麻のランチョンで図らずも2人の演者が紹介したのがこの論文。 レミフェンタニル麻酔後の疼痛コントロールについてプロポフォールとセボフルラン麻酔で比較している。 対象と方法 214名の予定乳癌手術患者を対象。 セボフルラン群とプロポフォール群さらに各々をレミフェンタニルhigh dose群(4ng/ml)とlow dose群(1ng/ml)に分けた。つまりSH群、SL群、PH群、PL群の4群に分けた。 セボフルランとプロポフォールはBIS40-50を目標。 手術終了30分前にモルヒネ2mgを投与して、あとはiv-PCAで投与。 術後疼痛の状況、モルヒネ使用量、PONV、シバリングの発生を比較。 結果 ![]() 術後のモルヒネ使用量、VASともにSH群で有意に高かった。 PONVはPL群で有意に低かった。 シバリングの頻度はPH、SH群でPL群、SL群とくらべて高かった。 考察と私見 この研究でのH群はレミフェンタニル4ng/mlを目標にTCI投与しているがせいぜい0.2μg/kg/minと決してhigh doseになっていないところが面白い。従ってせいぜい中等量というところだが、結果としては低用量とくらべてセボフルランとの組み合わせでは術後痛が強いという結果になっている。筆者らはレミフェンタニル投与後のhyperalgesiaがプロポフォールでは抑制されたためと考察しているがどうだろう。 一方でシバリングに関しては、high doseのレミフェンタニルではプロポフォール、セボフルランともにlow doseよりも多かったという結果になっている。レミフェンタニル以外に投与されているオピオイドは、モルヒネ2mgなのでtransitional opioidとしては少ない。乳癌手術後のVASが4cmくらいあるので、麻酔のデザインとしてやや問題があるようにも思われる。 いずれにしても今後レミフェンタニルのベターなパートナーは何かということがポイントになってくるだろうからこの論文は目を通しておきたい。 まったく余談だが、今回の学会では論文をスキャナーで読み込んで貼っただけというプレゼンが目についた。 分かりやすいプレゼンを目指すのであれば自分でグラフを書き直したり、せめてカラーで補助線などを追加すべきである。 ▲
by yamorimo
| 2010-11-10 22:51
| 麻酔
その他の臨床麻酔学会ネタの追加。
Dragerブースに気化器が展示してあった。新製品以外にこの種の博物館的な展示も面白い。 ![]() これは気化器の生産444444台目のモデルでたまたまイソフルラン用だったというもの。 ![]() こちらはセボフルランの気化器のカットモデル。この種のものを気軽にさわれるように展示してもらえると意味があるのではと思った。 セボフルランといえば、まさにセボフルランという本が出版されており、早速購入した。 ▲
by yamorimo
| 2010-11-07 21:45
| 麻酔
臨床麻酔学会3日目
今日はほぼ神経ブロックの部屋で過ごした。 今回の神経ブロック領域での話題は「超音波ガイド下脊柱管・傍脊椎ブロックと超音波画像」が発刊されたことだろう。ハンズオンもこれまでの上肢・下肢・体幹前面のコースと脊柱管・傍脊椎コースの2つに分かれて行われた。 ということでこの本を買ってもらえれば最新の神経ブロックの進歩は理解できると思う。 ▲
by yamorimo
| 2010-11-06 23:34
| 麻酔
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