remote preconditionaing
2010年 01月 15日
虚血侵襲を体内の別の部分で行っても効果がみられこれをremote ischemic preconditionaingという。
今回紹介するのは頸椎の手術において上肢でのremote ischemic preconditionaingが有効だったという論文である。
Effects of remote ischemic preconditioning on biochemical markers and neurologic outcomes in patients undergoing elective cervical decompression surgery.
J Neurosurg Anesthesiol 2010;22:46
対象と方法
頸椎症にたいて手術をおこなう40例をremote ischemic preconditioning(RIPC)群と対照群に分けた。
RIPC群では麻酔導入後に、右上肢を200mmHgの駆血帯で5分間の虚血を3回行った。
麻酔はミダゾラム、プロポフォール、フェンタニルで導入してプロポフォールとレミフェンタニルで維持した。挿管はグライドスコープを用いた。
術中はSEPをモニタした。術中から術後のS-100βとNSEの変化。術後の神経学的回復を検討した。
結果
SEPの変化には群間差はなかった。
神経学的所見(JOAスコア)は、術前は差がなかったが術後の回復度はRIPC群で良好だった。
術後のS-100βとNSEは対照群で有意に上昇していたが、RIPC群群では上昇が抑制された。
考察
これまでRIPCの効果は心筋で検討されてきた。今回の研究は脊髄障害に対するRIPCの効果を示した初の研究である。
RIPCの機序にはアデノシン、ブラディキンン、活性酸素などが考えられている。RIPCは脊髄虚血でも有効である可能性がある。
心臓でのRIPCについては、
Br J Anaesth 2007;99:611を参照して下さい。
私見
この程度の虚血侵襲でよいのであれば、CABGや下大動脈の手術、脳動脈瘤クリッピングなどでは上肢虚血によるRIPCを行ってみる価値はありそうだ。追試を待ちたいというところだろうか、、