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Does anesthetic managent affect cancer outcome?

Does anesthetic managent affect cancer outcome?
APSF newsletter 2008-2009;23:49


ちょっと思い立ってAPSFの文章を抄訳してみました。

はじめに

免疫系は感染症だけでなく、癌から我々を守る働きもある。周手術期のストレス反応は免疫系に影響を与える。癌の手術中は癌細胞が体中に放出される可能性があり、癌に対する免疫反応が期待される時期である。麻酔法により癌手術中の免疫能や患者の予後に対する影響についてまとめてみた。

ストレス反応と癌
動物実験により体を循環する癌細胞や微小な転移に対する免疫反応は細胞性免疫系、cytotoxic Tリンパ球、NK細胞、NK-T細胞、マクロファージにより行われている。NK細胞は癌細胞を認識し殺すのに重要である。インターフェロンやインターロイキンなど種々のメディエーターが免疫系の賦活に関与している。
ストレスによるβアドレナリン刺激はNK活性を抑制し癌の転移を促進する。臨床データーでは、周手術期の低NK活性は癌による予後不良と関係している。
血管新生は癌の転移巣の拡大に重要である。血管新生に関与する因子として、IL6、IL8、IL1β、シクロオキシゲナーゼ2、一酸化窒素、TNF,insuline growth factorなどがある。

手術、麻酔と癌の転移
手術そのものは免疫反応を抑制し癌の転移を促す。術前から存在する微少転移の増大、癌細胞の全身への播種が促進される。加えて、手術のストレスは血管新生を促進する。これまでのところ侵襲のより少ないアプローチがこれらの反応を抑制するかどうかは知られていない。むしろ、麻酔法が免疫反応に影響を与え、癌の転移に関与していることが明らかになっている。

麻酔薬
ラットの実験では、ケタミン、チオペンタール、ハロタンはNK細胞の活性を抑制し癌の転移を増加させる。ケタミンのこうした効果の一部は交感神経刺激作用によるものと考えられている。プロポフォールは転移には関与しない。これは弱い交感神経抑制作用によるものかもしれない。
術後痛のコントロールはストレス反応の抑制という意味で重要である。しかし、オピオイドは逆の効果をもたらす可能性がある。モルヒネには血管新生を促す効果があり、動物実験では癌の増大を招くという報告がある。オピオイドの免疫抑制作用についてはよく知られている。

区域麻酔
単独での硬膜外麻酔の使用は、手術のストレス反応を抑制し免疫抑制を防ぐ。加えて、区域麻酔は手術中の吸入麻酔薬とオピオイドの使用量を減らすことで、NK細胞活性の低下を防ぐ。硬膜外やくも膜下への少量のオピオイドの投与は安全である。
マウスによる実験では、セボフルラン単独による麻酔はセボフルランとくも膜下脊髄麻酔併用と比べて開腹手術時の肝転移数を増加させた。
臨床での検討は、2つの大規模なレトロスペクティブなものがある。
Exadaktylosらは、乳癌手術後の再発と転移を麻酔法の違いにより(傍脊柱管ブロックと全身麻酔)検討した。再発や転移のない患者は36ヶ月後で、傍脊柱管ブロックは94%、全身麻酔77%であり有意差があった。
同じグループは、前立腺摘出の麻酔を、全身麻酔とモルヒネ全身投与と硬膜外併用全身麻酔で比較している。硬膜外併用全身麻酔は術後のPSAの上昇を抑制した。
今のところ特定の麻酔法を推奨するのは時期尚早である。区域麻酔の有用性の機序として、ストレス反応の抑制が重要なのか、吸入麻酔薬やオピオイドの減量が重要なのかははっきりしない。これまでのところレトロスペクティブな研究しかなく、今後の長期にわたるプロスペクティブな検討が待たれる。

(私見)
結局、区域麻酔がよいのかストレスフリーの麻酔がよいのかはまだ結論が出ていないということのようです。つまり高容量のレミフェンタニルを使うとストレス反応を抑制するのでよいのか、免疫能を低下されるのでよくないのかという点ですね。今のところ、できるだけ区域麻酔併用で、プロポフォールと最小限のオピオイドで麻酔、術後鎮痛もしっかりすると癌患者の予後にはよいかもというところでしょうか?
ただ麻酔法の選択にはいろいろな視点がありますのでこれがすべてではないともいえると思います。
by yamorimo | 2009-05-25 18:30
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