人気ブログランキング | 話題のタグを見る

神経ブロックと上肢麻痺

このブログでは基本的に超音波ガイドによる神経ブロックを推奨している。また私自身は単回のブロックであれば全身麻酔後に施行するのを原則にしている。
全身麻酔後に神経ブロックを行うことの是非についてはこれまでにもいろいろ議論がある。私の考えは全身麻酔後であっても超音波ガイド下に施行するブロックは、放散痛を頼りに行っていたブロックよりも安全であろうということ。ただし安全に施行するにはそれなりの性能を持った装置と術者の経験が必要であろうとは思う。
さて、恐らく斜角筋ブロック後に上肢に麻痺が残り患者に8290万賠償で示談が成立(元の報道はこちら)したという。
いつもながら新聞の報道はよく分からないが、病院側の対応もよく分からない。少なくとも分かることはこの病院では全身麻酔に神経ブロックを併用することは止めたということなのだろう。

麻痺が起こった機序はよく分からないが、手術との関連の方が高いのではないだろうか。
私からいえることは、神経ブロックを開始する際は外科側の理解を十分に得たうえで簡単なブロックからはじめることをまずお勧めしたい。上肢の場合は手術中の神経障害との兼ね合いが常につきまとうので、適応に関しては整形外科医と相談の上、患者に充分に説明後施行する。特に若い患者であれば術後手が痺れるのはいやなのでと断られることも多い。麻酔薬自体も、成書には0.75%アナペインを使用と書かれているが、0.375%程度の濃度で充分である。使用量も20mlを最大としている。要は手術終了時には痺れ感はあるものの離握手は可能というレベルが安全である。同様に術後の上肢の感覚が戻るまでの神経麻痺にも注意が必要である。肢位や圧迫に注意する。
by yamorimo | 2008-07-27 17:23 | PNB
<< 診療報酬疑義解釈について 研修医のための携帯エコー活用法... >>