いまさらフェンタニル 2
2007年 03月 05日
その前に、フェンタニルの使い方の目安だが、シミュレーションが使えればこんな感じでやっている。もちろん参考だが。
目標とする効果部位濃度
一応の目標としては、
大手術(開腹手術など) 手術中 2-3ng/ml 手術終了時 2ng/ml
中手術(整形外科など) 手術中 1.5-2ng/ml 手術終了時 1.5ng/ml
小手術(眼科など) 手術中 1.5ng/ml 手術終了時 1ng/ml
ここで、手術中の維持濃度から20%低下するのに約30分かかりるので、それを目安に投与を中止あるいは減量することが大事だ。
問題は、効果部位濃度3ng/mlでは鎮痛が不足していることがある。脳外科手術の開頭時などはその後セーブすればよいのでここではいくら投与してもよい。しかし比較的短時間の手術で効果部位濃度4ng/mlくらい使っても鎮痛が不足気味のときはちょっと困る。こんな状況ではレミフェンタニルが優れているだろう。
次に覚醒時、実際には最後の閉創時にはそれなりに鎮痛が不足になる。ここでチョコチョコフェンタニルを足しながら手術終了を迎えるのはいつもドキドキする。こんな時は例えフェンタニルベースの麻酔をしていてもレミフェンタニルをかぶせるという使い方もあるのかもしれない。
逆にいえばそれ以外ではフェンタニルで困ることはない。また、術後もしばらく効果が残存しているというメリットもある。長時間の脳外科手術後はほとんど鎮痛薬が必要ないほどだ。
木山先生の飛行機の例えを使うと、レミフェンタニルが手術侵襲という山を遙かに高く飛び越していくのに対して、フェンタニルはときどき山にぶち当たりながらもなんとかギリギリを越えていくというイメージか?あとは着陸したくてもなかなか高度が下がらない。ただゆっくりさがるのでうまくいけば着陸は容易だ。GPSに当たるシミュレーターはやはり必須のものといえるだろう。研修で全身麻酔とはどんなモノかを学ぶにはこちらのほうがよさそうだ。
鎮痛手段は麻薬だけではない。局所麻酔などをうまく使って補助していけばいまさらだけど、まだまだフェンタニルは使えるハズだ。特に、日帰り手術など考えなくてよい現状ではなんでもレミフェンタニルという訳ではないのかもしれない。