古い話だが、私が研修医時代大きな影響を受けた本に諏訪邦夫先生の
「吸入麻酔のファ-マコキネティックス」という本がある。まだ麻酔ガスモニタもなかった時代、しかも今のセボフルランと比べると覚醒の悪いエンフルランやイソフルランを上手く使うには本書の知識が役に立った。
その後、麻酔薬も吸入麻酔薬だけでなく静脈麻酔薬が使われるようになり、TCIなどという概念も登場した今日、待望のというべきか「
麻酔薬の薬物動態」という本が出版された。
本書の特徴は、特にプロポフォールの薬物動態について、いろいろな特殊な状況でどのように変わるのかについて詳しい点だろう。惜しむらくは、取り上げられている薬物がやや偏っており、吸入麻酔薬はもちろんフェンタニルやレミフェンタニルについては取り上げられていない。
臨床薬理学としての麻酔科学を学ぶのに最適な教科書としてお勧めしたい。
今年の局所麻酔学会の帰り、本書の編者のO先生が参加者ひとりひとりに頭を下げて挨拶されていたのが心に残っている。そんな編者の心遣いの感じられる好書である。
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