年齢と全身麻酔中のバーストサプレッション
2024年 10月 27日
高齢者では全身麻酔中の脳波バーストサプレッション(抑制)の発生が多いのは当たり前と思えるのですが実際に裏付けるデータです。
背景:
患者の年齢はバースト抑制の発生における重要な危険因子であると考えられているが、これはまだ大規模データセットによって確認されていない。
方法:
この大学病院における単一施設後ろ向き解析では、2016年1月から2018年12月の間に全身麻酔を受けた18歳以上の患者38,628人の電子カルテを分析した。バースト抑制のリスク因子は、単変量および多変量解析を用いて評価した。 バースト抑制の発生率は、Entropy Moduleのバースト抑制比(BSR)、最大および平均BSR値、相対的なバースト抑制持続時間、平均揮発性麻酔濃度、バースト抑制時の年齢調整最小肺胞濃度(aaMAC)の平均値、およびバースト抑制エピソードの誤分類の可能性がある症例によって測定した。分析は、全麻時間、導入および維持段階について個別に実施された。年齢との関連性は、線形および多項式フィットを使用し、相関係数を算出することで評価した。
結果:
分析された54,266人の患者のうち、38,628人が対象となり、19,079人の患者にBSR >0のエピソードが認められた。BSR >0の患者は有意に高齢であり、 他の患者因子や処置因子と比較して、BSR >0 の予測力は年齢が最も高く(AUROC = 0.646 [0.638–0.654])、BSR >0 の確率は患者年齢とともに直線的に増加し(ρ = 0.96–0.99)、年間1.9%から9.8%であった。最大および平均BSRは年齢との間に非線形の関係を示したが、相対的なバースト抑制持続時間も維持中に直線的に増加した(ρ = 0.83)。さらに、バースト抑制を示す可能性のあるエピソードで、エントロピーBSRアルゴリズムによって検出されなかったものも、年齢とともに頻度が高くなった。BSR >0 を引き起こすのに十分な揮発性麻酔薬の濃度は、年齢と負の相関を示したが(セボフルラン:ρ = −0.71)、aaMAC 1.0に近い値にとどまった。
結論:
成人患者では、全身麻酔中のバースト抑制の確率は年齢とともに直線的に増加するが、麻酔濃度が低いと、患者の年齢が上がるにつれてバースト抑制が誘発される。同時に、アルゴリズムに基づくバースト抑制の検出は、高齢患者では性能が低下するようである。これらの知見は、麻酔における脳波の応用と監視戦略をさらに強化する必要性を強調している。