術中低血圧とせん妄
2024年 09月 24日
この種の研究は多く、何となく製品の宣伝に使われている感もあるので本研究の結果には安心しました。もちろんだからといって低血圧が許容される訳ではないことは自明です。あくまでも通常の血圧管理では差がないということでしょう。
背景
術中の低血圧は、不十分な脳血流により術後せん妄の発症の一因となる可能性がある。しかし、術中の低血圧と術後せん妄の関連性に関する証拠は明確ではない。そのため、予定された非心臓手術を受ける70歳以上の患者において、術中の低血圧が術後せん妄と関連しているという仮説が検証された。
方法
これは、2020年から2021年の間に単一の3次学術センターで予定された非心臓手術を受けた70歳以上の患者を対象としたレトロスペクティブなコホート分析である。術中低血圧は、平均動脈圧(MAP)閾値65mmHg未満の面積として定量化された。術後せん妄は、術後2日間の4A'sテスト陽性、および/またはChart-based Delirium Identification Instrumentを用いたせん妄識別を含む複合転帰の崩壊として定義された。低血圧と術後せん妄の関連性は、潜在的な交絡因子を調整した多変量ロジスティック回帰を用いて評価された。いくつかの感度分析が同様の回帰モデルを用いて実施された。
結果
合計2,352人の患者が対象となった(年齢中央値76歳、女性1,112人[47%]、アメリカ麻酔科学会の全身状態分類III度以上1,166人[50%]、ハイリスク手術698人[31%])。中央値[四分位範囲]の術中、平均動脈圧(MAP)が65mmHg未満の曲線下面積は28[0、103]mmHg・分であった。術後せん妄の全体的な発生率は14%(2,352例中327例)であった。潜在的な交絡因子を調整した後、低血圧は術後せん妄と関連していなかった。MAPが65mmHg未満の閾値以下の曲線下面積の第1四分位と比較して、第2、第3、第4四分位の患者では術後せん妄が多くなることはなく、補正オッズ比はそれぞれ0.94(95% CI、0.64~1.36;P = 0.73)、0.95(95% CI、0.66~1.36;P = 0.78)、0.95(95% CI、0.65~1.36;P = 0.78)であった。 また、感度分析やサブグループ分析のいずれにおいても、術中の低血圧と術後せん妄との関連性は認められなかった。
結論
我々のコホートで観察された低血圧の範囲において、我々の結果は、予定された非心臓手術を受ける高齢患者において、術中の低血圧は術後のせん妄と関連しないことを示唆している。