レミマゾラムって何?
2020年 07月 05日
日本麻酔科学会がWeb形式になったこともあり盛り上がらないが、8月には新規静脈麻酔薬のレミマゾラムが発売される見込み。コロナによる面会制限などで医療機関への情報提供もうまくいっていないようなので少し解説してみたい。
まずレミマゾラムとは
レミマゾラムは簡単にいうとミダゾラムにレミフェンタニルの構造の一部を組み込み超短時間作用性にしたものである。レミフェンタニルと同様に組織エステラーゼで分解され、代謝産物には活性がない。構造はほぼミダゾラムと同様でベンゾジアゼピン受容体への結合も同様である。
超短時間作用性になったことで持続静注でほぼ一定の濃度を維持することができるようになった。CSHTは時間によらず数分である。ミダゾラムは時間依存性にCSHTは延長するので持続静注で全身麻酔を維持するのは困難だった。プロポフォールも実際には長時間投与になると延長する。その意味ではレミマゾラムは理想的な静脈麻酔薬といえる。さらにフルマゼニルが使用できるので覚醒は非常に速いだろう。
問題点があるとすると麻酔深度である。ミダゾラムはBIS開発でも使用された薬剤ではあるが単独ではいくら投与量を増やしてもBIS値が60以下にはならないことが知られていた。レミマゾラムの治験ではレミフェンタニルを併用しているのでBIS値が50台になっているが恐らくそれ以上は下がらないハズである。少なくとも平坦脳波にはならない。臨床の麻酔時に使用してうまくBISなどの脳波モニターが使用できるのかがまず課題だろう。
実際の使用
商品名はアネレムでムンディーファーマから発売される。
50mgがバイアルに入っており使用前に生理食塩水で溶解する。
麻酔導入は12mg/kg/時で投与して70秒程度で意識消失が得られている。ほぼ10mg~20mgを1分で投与すればよいのだろう。メーカーサイドは麻酔導入から維持まで使って欲しいそうだが、20mg製剤を作ってくれれば吸入麻酔薬で維持するときの導入薬に使用できるのにと思わずにはいられない。それなら血管痛や血圧低下が少ないのでルーチンで使用できるだろう。
麻酔維持は導入量を投与後は0.8-1mg/kg/時。TCIが使用できないので投与速度を大きく変えないといけない。Mg/kg/時の投与ができるシリンジポンプが必要だろう。プロポフォールとの併用はないのでTCIポンプを流用でもよいのかもしれない。
特徴は血圧低下が少ないこと。高リスク患者や高齢者の麻酔にはよいのかもしれない。
覚醒は治験ではプロポフォールより時間がかかっているがここは使い方で改善するだろう。さらにフルマゼニルも使えるので最終的にはプロポフォールというよりはデスフルランのライバルになるのかもしれない。
使ってみたい症例
上記のように麻酔導入でよければすべての症例に。ポンプを使うのが面倒か?短時間の症例ではミダゾラムは使いにくかったがレミマゾラムでは問題ない。
維持までだと個人的には末梢神経ブロックを併用した短時間の整形外科症例で少量のレミフェにタニルも併用してと考えている。ブロックだけで手術できるがしっかり鎮静してi-gelで気道確保してというイメージ。
プロポフォール発売の時もそうだったが、まずはこの新薬で麻酔ができること。脳波の変化などを確認しながら徐々に使用症例を考えてみたい。セボフルランに続いて世界で初の全身麻酔薬。その可能性に期待したい。