新型コロナウィルスについての私見その②
2020年 04月 11日
新型コロナウィルスについての私見その②
2020年4月11日
いよいよ緊急事態宣言後初の週末です。
宣言当日の安倍首相の説明はよかったのですがその後は国と東京都との間の軋轢も垣間見えます。テレビや雑誌などでは政府の批判が目立ちます。医学的には人と人の接触を8割減らすことで感染者を減少に転じることができるという予測があるのですから、ぜひその方向で皆様努力していただきたいと思います。マスコミは批判ではなくどうしたら外出を少なく出来るのかを考えた対応をお願いしたいと思っています。ネットに頼らなくても勉強できるように小中学生向きの教育プログラムを増やす。子供向きのアニメを放送する。大人向けに過去の人気ドラマを一気放送する。などすぐにできることはいくらでもあるハズです。
1.現状
それは置いておいて現状です。
東京都の新規患者数は先週末の100名/日から今週末は200名/日までほぼ倍増しました。この感染症のやっかいなところは潜伏期が2週間程度あることです。対策をしてもその結果が出るには2週間かかってしまいます。その意味では小池都知事が最初できるだけ広範囲に規制してその後緩めていきたいと語っていたのは理にかなっています。このままのペースだと来週末は新規患者が400名/日近くになってしまいます。このくらいで緊急事態宣言から2週間が経過し、効果が出てきて横ばいから減少に転じればというのが希望を含んだ予想です。
ただ現状死亡患者は全国でも数名/日で推移しています。これは患者数が増えていても医療が正常に機能していることを示しています。医療が正常に機能しているうちに、なんとかここ1週間がピークで推移してくれればと思います。
2.何故家にいないといけないのか
その③でも書きましたが、とりあえず最小限の外出で家にいる限りは感染の危険はありません。新規の感染をできるだけ抑えるのが第一。
それ以前に感染し、家にいる間に症状が出る可能性もあります。その場合は、決められた手順に従い4日間程度様子をみてから電話連絡し、指定の医療機関を受診して下さい(ここがうまく機能していないという状況はありますが)。このようにして新たな陽性患者さんはホテルなどに隔離して別の人に感染するのを防ぐ。
この2つで理論的には2~4週間経過すれば新規の感染は起こらなくなるハズです。どこまで実行できるのかが問題です。
行政には新規感染疑いの人の迅速な診断手順の確立をお願いしたいと思います。現在の保健所が管理するシステムはまだ陽性患者が少なかった頃のものです。今は、早期診断と隔離が必要です。その一方で一般の方には陽性疑いの方から検体を採取すること自体が非常に危険であることをご理解頂きたいと思います。
3.医療機関の状況
私は患者数の少ない山口県にいるので東京での状況を直接には把握していませんが間接的には危機的な状況が伝わってきています。
まずコロナ患者さんを入院・治療するのは普通の患者さん以上にいろいろな手がかかります。完全にコロナ専門病院にすればいいのでしょうが、通常の患者さんへの感染、医療従事者への感染を防ぎながら治療していかなければいけません。通常は新型コロナのような感染症の患者さんは特別な病室(陰圧病室)で治療しますが、すでに一般の病棟にも入院させているようです。この場合、病棟ひとつをコロナ患者さん専用にする必要があります。このため他の病気で入院する患者さんを制限せざるを得ません。専用病室ではないので空調などを工夫する必要があるでしょう。知事さん達は新型コロナ用に**ベッドを確保したと話されますが現場での苦労は大変だろうと思います。通常の病院は病床稼働率90%以上で動いていますので、それ以外の患者さんをいれる余裕は元々ないのです。長引けば他の病気で治療が必要な患者さんにも影響が出てきます。
さらに医療従事者を守るには専用のマスク、帽子、顔のシールド、専用のガウンが必要になります。これらが世界中で需要がひっ迫しているために現場で不足しています。いくら優れた医療従事者でも物がなければ治療ができませんし、万一感染してしまうとその分戦力ダウンになってしまいます。問題なのは感染した医療従事者が症状がでるまでに他の医療従事者に感染させてしまう可能性があることです。この場合、その病院は機能を大きく制限せざるを得ません(飲み会で集団感染したのは論外ですが)。
重症患者さんの治療には人工呼吸器が必要になります。以前ニュースで国産の人工呼吸器を増産しているという動画をみたのですが、作られているのは本当に簡素なものでとても重症肺炎の治療に使えそうではありませんでした。報道されるのは数ですが、数だけでなく質も重要です。また、人工呼吸器を付けるとその患者をみる看護師と医師の数が多数必要になります。これも管理可能な医師、看護師は限られているので限界があります。
さらに危惧しているのは軽症者をホテルに移す方針です。これ自体は問題ないのですが、その分これまでは入院させて経過をみるだけでよかった患者さんの代わりに酸素吸入や輸液管理の必要な重症患者さんが増えていくことになります。同じ患者数でも必要な医療負担が上がってしまう可能性が大です。
このように現場では病床という箱以外にマンパワーとものすべてが不足している状態です。今回の場合は重症患者を他県に移動するのは困難(呼吸状態の悪い患者の搬送は危険)ですので、全国的な支援体制を行政で作って行かないと早晩東京の医療が限界に達する可能性があります。もっとも効果的なのは現場の医療スタッフに先がみえることだと思います。その意味でも「Stay Home」。よろしくお願いします。