周術期管理における区域麻酔の役割②
2015年 05月 15日
乳癌手術に対する区域麻酔の役割について
乳癌手術は術後それほど痛みがないことからこれまで区域麻酔の使用は限定的であった。
しかし、区域麻酔の使用により、
短期的には、術後痛の軽減と周術期にオピオイドの使用量が減ることから術後の悪心嘔吐の軽減効果が期待できる。
さらに中・長期的には、慢性痛の軽減や癌再発の抑制効果が期待できる。
乳癌手術に対する区域麻酔法としては、
硬膜外麻酔
胸部傍脊椎ブロック
PECSブロック
局所浸潤麻酔がある

胸部傍脊椎ブロックは肋間神経を最も中枢でブロックする方法である。胸壁全体の鎮痛効果がある。PECSブロックは肋間神経の外側皮枝をブロックする。側~前胸壁の鎮痛効果があるが胸骨周囲への効果は不十分である。

乳癌手術に対する胸部傍脊椎ブロックの効果について検討した論文である。

セボフルランとモルヒネの麻酔と、TIVA+胸部傍脊椎ブロックを比較した。
胸部脊椎ブロックの使用で、術後PACU滞在中から2日後までのVASが有意に低かった。

周術期のオピオイド使用量は有意に少なく、PONVの頻度も低かった。
それでは慢性痛に対する効果はどうだろう。


3ヶ月後、6ヶ月後ともに傍脊椎ブロックの併用は慢性痛の程度を軽減した。


このように乳癌手術において、区域麻酔の併用は急性痛、慢性痛、PONVのいづれも軽減する。では予後はどうだろうか?
(つづく)





