日本麻酔科学会③
2012年 06月 11日
初日の最初はTsubokawa先生の意識についての講演。翌日本人にお会いしたところ講演の内容はすでにLiSAに書いたとのこと。ということで詳細はLiSA4月号の特集「意識のバイオロジー」を参照しただきたい。
意識についてのトピックはネットワークが意識を作るという考え方である。ネットワークについてはresting state netoworkと呼ばれその中でもdefault mode network(DMN)が意識との関連で注目されている。DMNの中でも情報のハブとして機能しているのが楔前部である。プロポフォール、セボフルランはDMNの機能を低下させる。DMNをモニターすることができれば意識をモニターできると期待できるが現在のところ経頭蓋的にモニターする方法はない。
次に、関連して丸石製薬のランチョン。セボフルラン研究の最前線。
Nishikawa先生は麻酔中の夢に関する臨床研究の結果を紹介された。
Nishikawa先生らの約1000例での調査で、全身麻酔覚醒後に夢をみたとした人は26.1%、そのうちよい夢は53.8%であった。
夢をみたとした人は若い人、TIVAで多かった。
セボ:19.7%
PRO:33.6%
夢の有無は術後の outcomeとは関連がなかったが、よい夢をみた患者は嘔吐が少ない傾向がみられた。
プロポフォールで夢をみた患者が多かった機序としてGABAを介するドパミンの放出とreward systemの活性化が考えられる。
臨床濃度のプロポフォールは側座核のドパミンを増加させる。今回の検討でも制吐剤(ドパミン拮抗薬)を使用した患者ではよい夢の頻度が減少した。
講演では、プロポフォールで高率に夢をみていたことから全身麻酔中に意識のある患者が多く、セボフルランの方が安全といつものNishikaw先生の持論で締めくくられた。
夢をみるのは全身麻酔からの覚め際が多いともいわれており、個人的にはよい夢をみられるのであればTIVAがよいのではないかと思った。
ランチョンのもう一題は防衛医大佐藤先生の発達期の脳とセボフルランについての最新の研究の紹介。
動物実験では発達期の脳とセボフルランなどの麻酔薬との関連については関連が明らかでこれからはどうすれば障害を減らすことができるのかがポイントになる。
障害の機序のひとつとしてミトコンドリア障害がある。セボフルランはミトコンドリア障害あるいは酸化ストレスを介してミトコンドリアを傷害する。
そこでantioxidantによる治療が期待される。
しかし、antioxidantによる副作用として、すべてのROSを減らすのが良いわけではないという状況がある。OH-は明らかに有害であるが、O2-やH2O2 、NOは必要である。
そこで佐藤先生らはH2に注目した。H2はOH-のみを減少させる。また安価でありBBBを通過する。
1.3%のH2をセボフルランの吸入気に加えることで動物実験では発達期の脳に対する障害を劇的に減少させた。
すでに雑誌にアクセプトされているということで論文の公開が楽しみである。これからは水素吸ってみるかなと思ってみたりした。