Neurotoxicity and neuroprotection
2010年 10月 07日
LiSAの来月号ではないが、麻酔薬は敵か味方か、これらの結果を過度に危惧する必要はないが知識としては知っておく必要があるだろう。
Anesthesia and Neurogenesis
発達中の動物における研究から、神経新生やシナプス形成が完成する前にNMDA受容体拮抗薬やGABAA受容体作動薬への暴露は脳の組織学的変化をもたらすことが明らかとなってきた。2009年に発表されたいくつかのヒトでの研究では早期に麻酔薬に暴露されると成長後の行動学的あるいは認知機能の障害を起こす可能性がある。
ミネソタ州で少なくとも5歳までに生まれ育った5357名の小児での検討(Anesthesiology 2009;110:796-804)では、4歳までに全身麻酔を受けた小児と学習障害との関連がみられた。523名の小児が875回の手術を受けていた。全身麻酔で手術を受けた小児は、男子に多く、出生児体重2500g以下が多く、37週未満で生まれていた。これら3つの因子を補正した後に、著者らは4歳までに2回以上の全身麻酔を受けていると成長後の学習障害が起こりやすいことを報告した。1回の麻酔では学習障害との関連はなかった。全身麻酔の時間が120分以上も学習障害との関連がみられた。
同じグループは、出産と学習障害との関連について検討)Anesthesiology 2009;111:302)した。患者は3つのカテゴリーに分けられた。経膣分娩、全身麻酔による帝王切開、区域麻酔による帝王切開である。学習障害の頻度はそれぞれ、20.8%、19.4%、15.4%であり、区域麻酔による帝王切開で有意に低かった。これまでの研究では帝王切開と経膣分娩で学習障害に差はみられていないが、これらでは麻酔法については区別していなかった。帝王切開は出生時の胎児のストレスを減少し、区域麻酔は胎児が全身麻酔薬に暴露されるのを防いだことによるのではないかと考察されている。
DiMaggioら(J Neurosurgical Anesthesiol 2009;21:286-291)は、生後3歳までにソケイヘルニアの手術をうけた小児を対象にして、行動および発達障害の発生について検討した。対象として年齢の同じヘルニア手術を受けていない小児と比較した。ヘルニア手術を行った小児は、周産期に何らかの合併症(低体重、低酸素、感染や出血)を起こしている頻度が高かった。ヘルニア手術を行った小児で行動および発達障害の頻度が高かった(4.4% vs 1.2%)。ヘルニア手術を受けた小児は別の手術を受けていたり、対照群でも全身麻酔を受けている小児はいるのだが、著者らは若年時に全身麻酔や手術を受けると成長後に学習、あるいは行動および発達障害リスクがたかくなるのではないかと考察している。
Kalkmanら(Anesthesiology 2009;110:805)は0歳から6歳の間に泌尿器科手術をうけた小児の親にアンケート調査を行った。48%が学校で問題がある、30%が進級できなかったことがあり、22%がChildBehaviorChecklistで障害がみとめられた。著者らの検討では24ヶ月未満に手術をうけた小児とそれ以降に受けた小児で差をみとめていないが、サンプルサイズが小さかったためではないかと考察されている。
続く