TIVA再入門 ⑮
2010年 05月 08日
プロポフォールの場合肥満患者では標準体重を元に投与すべきと思っている人は多いようです。しかし、標準体重を元に投与して術中覚醒を起こしたという報告は散見されます。実際に、アンケート調査でも1例高度肥満患者に対してTCIポンプに標準体重を入力して術中覚醒を起こした事例がありました。
以前出したグラフですが、プロポフォールの就眠時濃度とBMIにはそれほど相関はありませんので、実体重ベースで投与で大きな問題はないと思います(このデータには超肥満患者はありませんが)。
最近の文献をひとつ紹介します。
No adjustment vs adjustment formula as input weight for propofol target-controlled infusion in morbidly obese patients.
Eur J Anaesth 2009;26:362-369
BMIが36~62の患者(日本の重症加算と同じですね)を対象に、プロポフォールのTCI投与を実体重ベースと、体重補正ありで実測の血中濃度と比較した。
体重補正は(corrected body weight)
CBW=IBW+(0.4×(TBW-IBW))
IBW=22×height×height
例えば、150cmで体重100kgの患者では、
BMI=44
IBW=50kg
CBW=90kg
となりますので、標準体重と比べると穏やかな補正といえます。
TCI投与はRugloopとGraseby3500を使ってMarshらのパラメーターで行っていますのでほぼ通常のTCIポンプと同じと思われます。
結果としては、CBWを使うと約30%ほど低めの血中濃度になっていました。
筆者らは実体重を元に投与してBISで補正することを推奨しています。
肥満の影響は初期の分布容量を体重を元に決めてよいのかという問題以外に、肥満患者では心拍出量が増えているなど種々の影響があります。また心拍出量の増加により肝臓からのクリアランスが増加する可能性など体重と用量以上に問題があります。
現状では、実体重をTCIポンプに入力してBISで補正する、つまり通常の患者と同じ麻酔管理でよいと考えています。
肥満患者では、
プロポフォールは体重補正なし。
レミフェンタニルとロクロニウムは体重補正あり。
フェンタニルは微妙。
という感じになろうかと思います。これまで肥満患者では覚醒が悪いという印象があったかもしれませんが、スガマデックスの登場で雰囲気変わるかもしれません。