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TIVA再入門⑪


TIVA再入門はBISモニタとレミフェンタニルの話題に移ります。

まず、症例報告から。

Vassiliadis M, et al.
Awareness despite low spectral entropy values.
Anesth Analg 2007;105:535

これはBISではなくエントロピーモニターの報告です。

症例は28歳、103Kgの女性。緊急虫垂切除術が予定された。
麻酔はレミフェンタニル100μgとプロポフォール180mg、ロクロニウム80mgで導入し、
プロポフォール2.4mg/kg/h~3.6mg/kg/h(原文から換算)とレミフェンタニル0.1-0.3μg/kg/minで維持した。エントロピー値は35~60で維持されていた。術中の血圧上昇はなかった。
しかし術後訪問で術中に覚醒していたことが判明した。

editorのコメントとして、GEにコンタクトを取ったがレスポンスがなかった旨が記載されている。

この症例は一見して、プロポフォールの投与量が少ない印象があります。身長が記載されていませんが著者らは肥満患者ということで少なめに投与したのかもしれません。一方でレミフェンタニルについてはもし肥満患者だったのであれば量が多かった可能性があります。
私が危惧するのは、高用量のレミフェンタニルを使用したTIVAではレミフェンタニルが脳波の徐波化など影響を与えてこれに対応してプロポフォールを減量することで術中覚醒を招いているのではないかということです。

実際にこの症例にはコメントが付いています。

Yli-Hankala先生(フィンランド)
この症例のプロポフォール投与速度は発売元の推奨よりも少ない。
症例のプロポフォール効果部位濃度は1-1.5μg/mlで、レミフェンタニルは8-10ng/ml程度である。
レミフェンニタルによる脳波の徐波化がこの症例のエントロピー値が低値であった原因と考えられる。より低量のレミフェンタニル(6ng/mlまで)であれば患者の意識とエントロピー値は一致した可能性がある。

原文より、
Large opioid doses change the EEG apart from their unreliable effect on consciousness.
Remember:EEG during anesthesia is never a universal direct measure of consciousness, but an indicator of drug effect!

Strandbergさん(フィンランドのGEの方か?)
この特別な症例はオピオイドと筋弛緩薬が使用され、プロポフォールが充分使用されていなかったケースと考えられます。レミフェンタニルによる徐波化によって脳波モニタがプロポフォールによる意識への作用を正しく評価できなかったケースと考えられます。このような症例はBISについても報告されています。
レミとプロポフォールについて効果部位濃度のグラフあり(上記コメントと同様)。
コメントもほぼ同様。

このようにレミフェンタニル単独で脳波に影響を与えるdoseを使ってしまうとプロポフォールによる鎮静作用をうまく評価できず、低いBISやエントロピー値に対応してプロポフォールのdoseを下げると術中覚醒を起こす可能性があるということは意識しておく必要があります。
プロポフォールとレミフェンタニルの併用はloss of responseに関しては相互作用があります。loss of consciousnessについてはやや疑問がありますがこれも相互作用があるとしても、オピオイドには記憶に対する作用がありません。意識がないようでも患者に術中の記憶が残ってしまう可能性はあるというのがこの症例報告から分かります。

ではどの程度使うと影響があるのでしょうか?
Millerの教科書のFigure27-8に各オピオイドの濃度と脳波への影響がまとめられています。
レミフェンタニルの場合は10ng/mlくらいから脳波の徐波化がみれらそうです。実際にはプロポフォールの効果がこれに加わるのでもう少し低い濃度でも影響があるかもしれません。
とするとレミフェンタニルが0.4μ/kg/minくらいからは影響があると考えてよいでしょう。紹介した症例はやはり肥満の影響でレミフェンタニルが予測よりも高くなっていた可能性もあると思います。

次回は、実際の症例で上記の仮説を説明します。
山場に入ってきましたがこの辺りは臨床モニター学会ネタなので更新はゆっくり目になると思います。
by yamorimo | 2010-04-03 17:13 | 電脳麻酔学入門
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