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TIVA再入門⑭

麻酔維持期での注意点のそのにで、血液希釈の問題を考えてみます。

プロポフォールは蛋白結合率が高く約97%が蛋白と結合しています。薬理活性のあるのは蛋白と結合していない残りのプロポフォールですね。
このため血清の蛋白濃度が低下して、このフリーのプロポフォールが増えると薬理作用が増強します。
麻酔維持期に考えないといけないのは、大量出血や人工心肺使用時です。

人工心肺中のプロポフォールは、体温の変化、臓器血流量の変化に血液希釈の問題がからむので適正な使用量というのはかなり難しくなります。BIS自体も心肺からの離脱時にはマイクロエンボリなど脳の障害の影響もからんできます。

出血時も同様に蛋白濃度の低下と、もし心拍出量も低下すれば肝血流量が低下してプロポフォール濃度が上昇する可能性があります。大量出血が予測させる手術ではこだわりがなければTIVAを避けた方が安全です。
# by yamorimo | 2010-05-03 00:49 | 電脳麻酔学入門

AnestAssist近況

AnestAssitですが、
594のダウンロードに対して、日本でのダウンロードが373になったという連絡が来ました(ちなみに私はこの件に関して何らconflict of interestはありません)。あくまで有用なソフトウェアを紹介するのとさらなる改善に協力するというスタンスです。

ただ販売ランキングの推移をみると明らかにLiSA4月号以来ダウンロードが伸びているのが分かります。http://www.appannie.com/anestassist-pkpd/ranking/history/#store_id=143462&start_date=2009-07-27&end_date=2010-04-28

早くiPadで使ってみたいですね。
# by yamorimo | 2010-04-29 23:06 | 電脳グッズ

TIVA再入門⑬

TIVA再入門。今回は麻酔維持期に知っておきたいことなどです。

前回説明したように、麻酔維持中はレミフェンタニルの影響などでBISでプロポフォールの効果を判断するのが難しくなります。そこで、手術開始前にレミフェンタニルのdoseを下げた状態でBISが40-50になるようにプロポフォールの目標血中濃度を設定してあとはあまり変化させずに維持することを勧めています。術中の調節は基本的にはレミフェンタニルで行います。
しかし、いろいろな要因でTCIで一定にしていてもプロポフォールの濃度は変化してしまいます。最も注意が必要なのは心拍出量です。

心拍出量の影響については「臨床麻酔」3月号の中尾先生の総説に紹介されているので参照して下さい。基本的には心拍出量が高くなるとプロポフォールの血中濃度は低下し、低くなると血中濃度は高くなります。従って、レミフェンタニルの併用は心拍出量を低下させてプロポフォールの血中濃度を高くすることが知られています。一方、カテコラミンの使用はプロポフォールの血中濃度を低下させる可能性があります。
このような理由でsepticなハイパーダイナミックの症例ではTIVAを避けた方がいいだろうと思います。
一方でこれは私見ですが、覚醒時に心拍数が40くらいの人はアトロピンで心拍数を上がるとすぐに覚醒するような印象も持っています。

この他プロポフォール麻酔中の注意点については「麻酔薬の薬物動態」(真興交易)が詳しいです。今日から実践できるTIVAとTIVA2、そして麻酔薬の薬物動態の3冊はTIVAを実践する上での必読書です。
# by yamorimo | 2010-04-29 21:28 | 電脳麻酔学入門

臨床モニター学会レポート

続いて臨床モニター学会のレポート。

新しいアルゴリズム、灌流指標PI、脈波変動指標PVI
-全身麻酔管理にどう生かすか-
伊藤先生(東海大学)

PIとPVIの一般的な部分は省略。

利用法として輸液反応性以外に、麻酔深度のモニタとしても使えるのではないか?

PIとPVIは自律神経反応を反映する。
例えば、挿管前後でレミフェンタニルが0.3μg/kg/min投与ではPIが低下するが、0.5μg/kg/minでは変化しない。

腹腔鏡手術では気腹操作によりPIは低下し、PVIは上昇する。head downではPVIは低下する。

信頼できないケースとしては
PIの前値が著しく低値
頻回の体位変換などがある

輸液反応性の指標としてはPVIは有用だが、入れすぎの指標にはならない
心不全傾向の人にはCVPなどと併用して判断する

周術期循環評価における非侵襲的 SpHbモニターの有用性と限界
中西先生(日本医科大学)

SpHbはMasimo社のパルスオキシメーターで測定できる
8波長以上使用することでHb濃度を連続的に測定できる

PIやPVIと同時に測定できるので急激な出血などの評価ができる
現在精度を評価中でまだ市販されていない

どちらもMasimoのパルスオキシメーターの新機能ですが、最後のSanuki先生の講演後に、日本光電の青柳さんが色さえついていれば何でもパルスオキシメーターで測れると発言されていました。
ということでパルスオキシメーターには注目です。

術中覚醒シンポの内容については、「臨床麻酔」6月号に掲載されると思います。
またSanuki先生の講演も同様のものがヤンセンのWeb講演会で視聴できる様です。半分しか聴けなかったのでこちらも省略です。

臨床モニター学会は一時期低調でしたが、フロートラックの登場あたりからネタが増えてきたのと、土曜日1日の予定になった(以前は金曜日から土曜日の午前だった)ので勉強に行くにはよい学会だと思います。
ただ以前は産婦人科、循環器内科などの先生も参加していましたがほぼ麻酔科の学会になった感はあります。
# by yamorimo | 2010-04-26 22:13 | 麻酔

ブリディオン発売記念講演会そのに

後半は、日本医大の鈴木先生。ロクロニウムの講演でもお馴染みですね。
ブリディオンが変えるこれからの筋弛緩コントロール
- one minutes onset and one minute offset -

スガマデックスの投与量の目安

ロクロニウム投与直後 16mg/kg
1-2 in PTC 4mg/kg
T2 in TOF 2mg/kg

スガマデックスは血中のfreeのロクロニウム濃度を下げることで神経筋接合部からロクロニウムを血中に引き戻す

スガマデックスとロクロニウムの複合体は尿中へ排泄
腎不全患者では半減期1000時間程度(透析でどの程度抜けるかはまだ不明?膜にもよる)

結合率
ロクロニウム 100とすると
ベクロニウム 32
パンクロニウム 14

ベクロニウムの拮抗には倍量が必要

今後のロクロニウムの使用としては持続投与が増えるだろう

重症筋無力症患者にもロクロニウムとスガマデックスの使用で安全に管理できたとの報告がある

妊婦に対しては、胎盤を通過しない

乳汁には少量移行するが、消化管からは吸収されないので安全

スガマデックス投与に再挿管が必要になった場合
EU諸国では次のロクロニウム使用まで24hあけるとされている
日本ではロクロニウム or ベクロニウム or SCCしか選択がない

このためロクロニウムを1mg/kg以上使用するのがよいだろう
作用発現は3分とやや時間がかかる
作用時間は短くなるので筋弛緩モニタは必要

スガマデックス投与から30分以後であればロクロニウムは迅速に作用

ロクロニウムやベクロニウムによりアナフィラキシーショックが起こった場合にスガマデックス投与は有用かも(どうやら先週SH先生が質問された様子)

ワゴスチグミンとスガマデックスの併用はメリットがないので勧められない
サクシニルコリンの作用持続時間よりもロクロニウムとスガマデックスの併用の方が持続時間は短い(もうサクシニルコリンは必要ない)
つまりこれまでは短時間での作用発現を期待して1mg/kgのロクロニウムを使うと、CICVになった場合だけでなく、短時間の手術ではちょっと困っていたがこれがスガマデックスで拮抗可能ということでよりロクロニウムが使いやすくなったということだろう

最後に2人の演者とももうネオスチグミンは使用せず、全例スガマデックスを使うということで締めくくりとなった
# by yamorimo | 2010-04-25 11:07 | 麻酔