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ソノサイトジャパンエデュケーションセンターのリニューアル

神経ブロック関係のワークショップを行ってきたソノサイトジャパンエデュケーションセンターのホームページがリニューアルされユーザー会員登録が行えるようになります(3/1)。
これまでのワークショップ以外に出張型やエキスパート訪問指導という形態もあるようです。私や常連のshiba先生はここのteaching facultyという肩書を持っていますがますます忙しくなりそうですね(他人モード)。

神経ブロックに関してはそろそろ大人数のハンズオンからより実践的にどうする?という段階に入ってきましたので、今後どのようにしていくのか検討することは多いと思います。
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by yamorimo | 2010-02-28 12:02 | Trackback | Comments(0)

TIVA再入門その⑤

前回、患者の呼名反応消失時(LOR)のプロポフォール効果部位濃度を評価することで、個々の患者のプロポフォールに対する個人差を評価すると説明しました。しかし、プロポフォールのTCI投与や効果部位濃度の計算は3コンパートメントメントモデルに基づいていますが麻酔導入時に適応するには問題もあります。

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3コンパートメントメントモデルでは各コンパートメント内のプロポフォール濃度は一定であるのが前提ですが、投与初期には当然濃度差ができてしまいます。始めに大量にボーラス投与を行うとその濃度の高い部分が最初に脳へ循環した際に急速に脳内濃度が上昇してしまう可能性があります。ですから投与初期にはできるだけゆっくり血中濃度を上げたほうがLORのプロポフォール効果部位濃度を正確に評価できることになります。

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これは同じ2.5mg/kgのプロポフォールを投与速度を変えて投与した際の中枢神経への移行速度t1/2 ke0を検討したものです。TCIポンプに組み込まれているt1/2 ke0は2.6分ですが、ボーラス投与すると1.6分と早くなることが分かります。TCIでの投与開始時には目標血中濃度を高くすればするほど初期のボーラス投与量が増えますのでできるだけ目標血中濃度を低めに設定して、徐々に上げていくことが重要です。

実際にt1/2 ke0を変えるとどうなるか、TCIポンプのデフォルト設定とボーラス投与時の1.6分で比較してみます。

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これは目標血中濃度を6μg/mlで投与開始した際のシミュレーションです。もし投与開始60秒で患者の反応がなくなったとするとTCIポンプでの効果部位濃度は1μg/mlです。しかし、実際の効果部位濃度はボーラス投与では1.8μg/mlとなります。ここまでは高くないかもしれませんが、初期ボーラス投与量が多いと患者就眠時の効果部位濃度を低く評価する可能性があることが分かります。これではLORでの効果部位濃度を指標に麻酔を維持すると術中覚醒を起こす危険があることを意味します。

実際に、初期のTCIポンプの目標血中濃度をどの程度にすればいいでしょうか?前回は2μg/mlでの例をお示ししましたが、これでは導入に時間がかかるので一般的ではありません。
そこで自分の麻酔症例で3μg/mlと4μg/mlでそれぞれ覚醒時プロポフォール効果部位濃度-LOR効果部位濃度の分布を示します。縦軸は症例数です。
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初期設定3μg/mlでは両者の差はほぼプラスマイナス0.5の範囲に収まります。マイナスはLORでの効果部位濃度よりも覚醒濃度が高かったことを示します。初期設定3μg/mlでの問題は患者によってはなかなか就眠しない症例があることで、これについてはまた説明します。

4μg/mlでは全体にばらけた感じで、マイナス側の症例がやや多くなります。自験結果からは初期目標血中濃度は3μg/mlがいいだろうと思います。4μg/mlはかろうじて許容範囲ですがこれ以上にはしないほうがいいと思います。
実際には3μg/mlでスタートしておいて、効果部位濃度が1.5μ/mlに上がったら、3.5μ/ml、効果部位濃度が2μg/mlで4μg/mlという感じで症例によっては徐々に上げていきます。

次回は、初期目標血中濃度以外の注意点を説明します(週1回更新予定)。
質問はコメント欄かこちらへどうぞ。

追記
なんちゃってTCIの例がみられるのも麻酔導入時の特徴です。TCI投与以外にボーラス投与するのは論外ですが、TCIポンプのプライミングボタンでボーラス投与してもTCIの計算には反映されません。TCIで投与すると導入に時間がかかるのが欠点ですが、ここがポイントなのでゆっくり導入が勧められます。
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by yamorimo | 2010-02-28 00:24 | 電脳麻酔学入門 | Trackback | Comments(8)

橈骨動脈穿刺失敗例

橈骨動脈穿刺の失敗例をアップしました。

動脈の右側にカテ先が入ったところで血液の逆流をみとめたので真ん中ではないなと思いながらガイドワイヤー挿入。特に抵抗はなかったのですがカテの挿入はできませんでした。カテ先は血管内ぎりぎりか血管壁内だったのでしょう。実際の臨床でもインサイトAでの失敗例はこんな感じなのかなと思い紹介します。
その後、再穿刺で真ん中に刺入して成功しました。インサイトAの成功率を高めるには超音波ガイドがいいように思います。


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by yamorimo | 2010-02-26 00:40 | 麻酔 | Trackback | Comments(0)

TIVA再入門その④

プロポフォールによる麻酔導入のポイントは患者の呼名反応消失時のプロポフォール効果部位濃度を評価することで、個々の患者のプロポフォールに対する個人差を評価することにあります。
ボランティアにおける研究では反応消失時(LOR)と呼名開眼時のプロポフォール効果部位濃度は相関することが報告されています(Iwakiri et al. Individual effect-site concentrations of propofol are similar at loss of consciousness and at awakening. Anesth Analg. 2005;100:107)。
実際の臨床では併用する麻酔薬、患者の精神状態、疼痛、TCIポンプの設定などにより必ずしも一致しないこともあり得ます。
下の図は、脳外科開頭手術におけるLORのプロポフォール効果部位濃度と呼名開眼時のプロポフォール効果部位濃度の相関をみたものです。比較的長時間の手術が多い脳外科手術でも両者はよく一致します。脳外科医手術ではBISを使用しても良質の脳波を記録することは難しくBISの信頼度は低いのですが、このように麻酔導入時に効果部位濃度を記録しておけば以後の麻酔管理の指標になります。また、予定の濃度で覚醒しない際は、脳出血などの異常が起こっていたこともあります。
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このような結果を得るには麻酔法にある程度のコツが必要です。
1)TCIポンプの初期目標血中濃度は低めに設定しておき徐々に上げる。
2)前投薬は投与しない。
3)オピオイドや他の麻酔薬(ケタミンなど)の前投与は行わない。
4)プロポフォールの投与はできるだけ体に近いところから行い。輸液速度も速めにしておく。

などです。上記の症例の場合は、初期目標血中濃度を2μg/mlで以後0.5μg/mlづつ上昇させています。前投薬はなしで、プロポフォール投与開始前にオピオイドの投与は行っていません。また、閉頭時にはフェンタニル100μgを投与し、さらに手術終了時には頭皮ブロックで鎮痛を行っています。

これでは麻酔導入に時間がかかりますので、次回は通常の手術で初期目標血中濃度を3μg/mlで行った場合と4μg/mlで行った場合について説明します。
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by yamorimo | 2010-02-22 22:07 | 電脳麻酔学入門 | Trackback | Comments(9)

VScan

You tubeをチェックしていたら面白そうな新製品を発見しました。IARSあたりでは展示してあるかもしれないですね。続報を求むということで動画のみ紹介しておきます。
my エコーの時代も近そうですね。




これでみるとカラードップラー機能、ボイスレコーディング機能(おそらくエコーしながら患者名や所見を記録する?)が付いていることが分かります。プローブはセクタかマイクロコンベックスみたいで心エコーもできそうです。
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by yamorimo | 2010-02-21 22:49 | PNB | Trackback | Comments(1)

TIVA再入門その③TIVAはオーダーメード

その②に対するコメントはつきないのですが先に進みます。麻酔科後期研修中の方はこれらのコメントを是非目を通していただきたいと思います。学会へいくよりも勉強になりそうです。

基本的にこの企画はTIVAのmethodをもう一度整理してみようということなのでセボvsTIVAについてはスルーするつもりだったのですが、基本的な部分を最初に整理してみます。

前回提示したようにTIVAでは設定するプロポフォール濃度の個人差が大きいのが特徴です。一方セボフルランは1-1.5%程度に設定しておけばほぼ大丈夫という違いがあります。

いいかえるとセボフルランの麻酔は「洋服の○○」で売られているスーツと考えるとよいと思います。誰でもそこそこ品質のものを買うことができます。少し採寸して裾上げをする必要はありませんが、店員さんもそこそこの知識で大丈夫。

一方TIVAはオーダーメードのスーツということができます。経験のある職人さんがきちんと採寸する必要があります。ある程度できたら試着して部分的に修正しながら仕上げていきます。仕上がりは職人さんの腕次第ということになります。いいかげんな仕事では「洋服の○○」のスーツを超えることはできませんし、ひどい仕上がりになるかもしれません。
ここではTIVAのいい職人さんを目指すのが目的となります。またいい職人さんは「洋服の○○」でスーツを売ってもいい仕事ができるかもしれません。ですから企画の最後はセボフルランの麻酔法にも触れるつもりです。

ということでまず必要なのは採寸の方法ということになります。ここの部分は患者の就眠時のプロポフォール効果部位濃度で評価します。その後の修正はBISモニタを使います。この辺りのノウハウを提示していきます。
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by yamorimo | 2010-02-21 11:01 | 電脳麻酔学入門 | Trackback | Comments(0)

TIVA再入門その②アンケート結果から

昨年の術中覚醒アンケートの結果で注目すべきは、やはり術中覚醒例24例のうちTIVAで行われていたものが21例もあったことでしょう。この結果をどう考えるかです。少なくともTIVAは術中覚醒が多いから危険だと考えるのは早計です。ただしこの結果はTIVAを実践している上で多くの示唆を与えてくれると思います。

まずいえるのはセボフルランでの術中覚醒は非常に少ないということがいえると思います。1例はセボフルラン0.8%で維持されていた症例。もう1例は気化器内のセボフルラン切れですから1%以上のセボフルランを使い適宜レミフェンタニルを併用しておけば術中覚醒はまず起こらないといえます。

TIVAの場合は、まずルートトラブルが原因と考えられる症例が3例ありました。ここは最も注意しないといけないポイントです。また肥満患者に標準体重を元にTCI投与し覚醒していた例が1例あります。肥満患者への投与についてはまた改めて考えたいと思いますが、基本的には実体重を元に投与すべきと考えています。

それ以外はやはり麻酔薬の不足ということになろうかと思います。コメントで多かったのはTCIとBISへの言及です。ハードとソフトではないですが、今後の内容としてはいかにTCIとBISを活用してTIVAを行っていくかがメインのポイントになると思います。

基本的にはプロポフォールで麻酔すると術中覚醒が多いということはないと思います。Glass らの論文(Bispectral analysis measures sedation and memory effects of propofol, medazolam, isoflurane, and alfentanil in healty volunteers. Anesthesiology 1997; 86: 836-47)でみると同じBIS値で記憶を抑制する効果はプロポフォール>イソフルランとなっています。要は使い方の問題だろうと。
ポイントは、TCIでプロポフォールを投与した際の適正な目標血中濃度に個人差が大きいことで、ここの見極めができなければ術中覚醒や覚醒遅延を起こしてしまうということになります。セボフルランでは1-1.5%程度でほぼ適正な鎮静度といえますが、プロポフォールではもっと幅が広くなります。

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これは私がTIVA(プロポフォール-レミフェンタニル)で麻酔した80例分の維持プロポフォール濃度を示したものです。1.5μg/mlから4μg/mlまで幅広く分布しています。

この辺りの設定の考え方を次回から説明してみます。
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by yamorimo | 2010-02-18 23:33 | 電脳麻酔学入門 | Trackback | Comments(14)

TIVA再入門その①

TIVA再入門を開講します。どのように発展していくか分かりませんがお付き合い下さい。

初回は何故今TIVAなのかということから始めてみます。

ここ数年の日本の麻酔の変化は鎮痛であることは間違いないと思います。レミフェンタニルと末梢神経ブロックの進歩はにより、これまで考えられなかった鎮痛状態を簡単に得ることができるようになりました。今や全身麻酔の主流は鎮痛主体のバランス麻酔であるといえます。
この場合の鎮静薬としてプロポフォールとセボフルランがある訳ですが、セボフルランについては使用する濃度が、0.8%程度の人から2%以上の人まで幅広いことがこれまでのアンケート調査で明らかとなりました。セボフルラン2%では当然併用するオピオイドは少量であり、レミフェンタニルなんて必要ないという意見も耳にします。一方、低濃度のセボフルランで維持するには高用量のレミフェンタニルが前提となります。このように同じセボフルラン麻酔でも同床異夢になっているのが現在の状況です。セボフルランは多少鎮痛が不足しても濃度を上げることでなんとなくごまかすことができるのが長所であり短所でもあります。

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一方で、TIVAでは鎮痛ということがセボフルラン以上に重要になります。麻酔科医のトレーニングの一段階としてTIVAにより鎮痛主体のバランス麻酔を実践することは非常に重要であると考えています。この段階を経験することでセボフルラン麻酔の方法も変わっていくと思います。
私はTIVAを専門とする人間でありながら最近セボフルランの宣伝を行っていたのはこのような理由です。

ということでこのTIVA再入門はレミフェンタニルと末梢神経ブロックを駆使した最新の麻酔法について説明していきたいと思います。

次回は、術中覚醒アンケート結果から分かることです。
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by yamorimo | 2010-02-16 20:37 | 電脳麻酔学入門 | Trackback | Comments(5)

AnestAssitとフェンタニルシミュレーション

AnestAssitを使っていて、フェンタニルの濃度が少し低いように思うのですが如何でしょう。ご意見があればコメントお願いします。
また、一度いいところでプログラムが暴走して記録も残っていないということを経験しました。何か不具合を経験された方は同じくコメントお願いします。
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by yamorimo | 2010-02-15 21:44 | 麻酔 | Trackback | Comments(0)

紀伊田辺セミナー

第4回紀伊田辺セミナーに参加した。

この地では麻酔科医よりもパンダの方が人口が多いという。
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そんな地に多くの麻酔科医が集まった。

講義で印象に残ったのはこちらの常連になったK先生の覚醒下挿管の話だった。全身麻酔のひとつのポイントは麻酔導入から気管挿管の部分であることは間違いない。ここで眠らせようと考えるから難しくなってしまう。K先生の提唱する意識下挿管でいいと気付けば多くの問題が解決してしまう。
私も今年になってから、EF20%の腹腔鏡下胆嚢摘出術、BMI 50の多発骨折など従来であれば麻酔困難な症例をいずれもK先生の方法に準じて麻酔導入し、その後も問題なく管理することができた。新しい気道確保デバイス、レミフェンタニル、さらにフロートラックなどを活用すれば麻酔の許容範囲はかなり広がっていると感じている。必要なのは使いこなしのテクニックということになる。

その技術を広めるという意味で、今回超音波ガイド下中心静脈穿刺のインストラクター養成コースを受講させていただいた。新しい技術を普及させるには何が必要なのかそのヒントがつかめたような気がする。
今年は伝えるということをキーワードにしてみたい。
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by yamorimo | 2010-02-15 21:38 | その他 | Trackback | Comments(8)