カテゴリ:術後鎮痛( 5 )

レミフェンタニル投与後の鎮痛法(神経ブロックの活用)

レミフェンタニル麻酔への末梢神経ブロックの併用は、術後鎮痛という面では非常に有用である。
ただし、レミフェンタニルになってから神経ブロックの効かせ方にはいろいろ変化がでてきた。

これまでは全身麻酔に末梢神経ブロックを併用する目的として術中の鎮痛があった。またこれにより体動が抑制できるのも魅力だった。自然と使用する局所麻酔薬はアナペインでいえば、0.5-0.75%くらいで運動神経までばっちり効いているのを目標としていた。
レミフェンタニルにより術中の鎮痛が充分得られるようになると、術中鎮痛としての神経ブロックの意義は薄れてきた。もちろん、神経ブロックの効果が不十分な部位への手術操作時やレミフェンタニルで抑制できないターニケットペインのコントロールには有用であり全く必要ない訳ではない。しかし主体としては術後鎮痛になってきたことは間違いない。そうなると使用するアナペインは0.2-0.375%程度のこれまでよりも低濃度で、痛覚の遮断を目的とすれば充分となる。ブロックするタイミングも手術終了時におこなう症例が増えてきた。自分の症例では0.2%でも10時間程度の鎮痛は得られている。

今後の課題は持続末梢神経ブロックになる。使用できるデバイスが海外に比べて限られている。またコストの問題もある。

これは個人的な考えだが、末梢神経ブロックは1回注入のみにして持続が必要な症例では麻薬の持続静注を行うのがよいと考えている。手術終了後よりフェンタニルの持続静注を開始すると、ブロックの効果が切れる頃には濃度が上昇しており丁度よい。
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by yamorimo | 2008-02-02 00:10 | 術後鎮痛 | Trackback | Comments(6)

レミフェンタニル投与後の鎮痛法(モルヒネの投与法)

これまでは術中から術後の鎮痛にフェンタニルを使用する方法を紹介した。
結構面倒なので簡単な方法をという向きにはモルヒネの使用が適している。

transitional opioidとしてのモルヒネの投与は0.1-0.15mg/kgを覚醒の1時間前くらいに投与する。モルヒネの場合効果部位濃度の上昇が緩徐であり、代謝産物も鎮痛作用があることから早めの投与が必要になる。このあたりはTubokawa先生の書かれたLiSA 2007;14:864-9に詳しい。
実際には、5-7.5mgを投与しておいて、覚醒時の呼吸状態や鎮痛効果をみて追加を考える。
体重50kgの患者に7.5mgを静注して、60分後に2.5mgを投与した場合のシミュレーションを示す。
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実際にはこれに代謝産物のM6Gの分が加わるので非常に長時間鎮痛効果が得られることが分かる。実際、数時間は効いているという印象がある。
フェンタニルと比べると高齢者では傾眠傾向になっていることが多い。長時間作用ということで呼吸抑制が出た場合の危険は高いのでやや少量から試してみていただきたい。

PCAにする場合は上記の投与を行っておいて、1回投与量1-2mgで行う。この場合持続静注は行わない。
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by yamorimo | 2008-01-26 21:42 | 術後鎮痛 | Trackback | Comments(0)

レミフェンタニル投与後の鎮痛法(フェンタニルのIV-PCA)

前回取り上げたフェンタニルの持続静注だが、これを行うには何らかのポンプが必要になる。シリンジポンプでもよいが最近の患者は早期に離床するのでちょっと使いにくい。簡易的に行うには、フェンタニルを10μg/mlに希釈して流量可変式のディスポーザブルインフューザーを使うという方法がある。

術後のフェンタニルの必要量は症例によりさまざまでありできればPCAでの投与が望ましい。PCAの場合は、投与速度をやや少なめにして、一時間分の投与量をPCA投与量とするのが一般的である。15-30μg/h程度で、15-30μgをPCA投与量、ロックアウト時間は10分程度になる。PCA投与を行うにはこれまでは機械式を用いていたが、最近の流行はこちらもディスポーザブルタイプだ。例えば、クーデックシリンジェクターであれば時間流量1ml、PCA投与量1mlで充填時間10分のタイプがある。フェンタニルを2倍希釈すると25μg/hとなる。

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3回に分けてレミフェタニル投与後のフェンタニルによる鎮痛法について説明した。
レミフェンタニルを使いこなすには結局フェンタニルの使い方に精通する必要があるということだ。また、考えれば考えるほど術中のフェンタニル投与量が増えていくのが皮肉ではあるが、うまく両者を併用することでこれまでとはレベルの違う麻酔が実現できるハズだ。

何となく納得できない人には次回、モルヒネの使い方について。
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by yamorimo | 2008-01-24 22:02 | 術後鎮痛 | Trackback | Comments(0)

レミフェンタニル投与後の鎮痛法(フェンタニルの持続静注)

 前回説明したように、手術中のみのフェンタニル投与では術後の効果持続は限られている。ことにレミフェンタニルの登場後はいずれにしても手術中のフェンタニル投与量は減っており、術後長時間の効果を期待するには、手術後も持続静注を行う必要がある。
 しかし持続静注もよく考えて投与計画を立てないと効果が発揮できない。教科書的には術後鎮痛目的の投与速度は0.5-1.0μg/kg/hである。そこで体重50kgの患者に100μgを投与後、0.5μg/kg/hで持続投与してみる(下図の上)。これでは持続静注開始後は一時的に効果部位濃度が低下してしまう。これまでは手術中にフェンタニルが投与されある程度の効果部位濃度が維持されていたので、スムーズに術後につなぐことができたが、レミフェンタニル麻酔では、フェンタニルへの移行は簡単ではない。

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 IV-assistを使ってフェンタニルを1ng/mlで維持する投与計画を立ててみる。ボーラスで40μgを投与後、90μg/hで35分、その後70μg/hで1時間56分(ボーラス投与後から)まで、50μg/hで4時間4分まで、35μg/hで9時間11分後まで、その後ようやく25μg(0.5μg/kg/h)となる。プログラム投与できるシリンジポンプがない現状ではICUで管理しない限り時間に応じて投与速度を変化させるのは困難かもしれない。
 解決策としては、やはり早めに投与を開始することだろう。例えば手術開始から上記の投与計画に沿って1ng/mlを維持しておけば、4時間程度である程度投与速度は安定するので、あとは0.5μg/kg/hで維持してもよいだろう。もう一つは手術終了前からボーラス投与を繰り返しておく方法。終了1時間前に100μg、その後30分ごとに50μgを2回投与し、25μg/kg/hを開始するとほぼ1ng/mlで維持できる(図下)。この辺りが現実的な投与計画になる。

次回はIV-PCAについて。
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by yamorimo | 2008-01-23 21:26 | 術後鎮痛 | Trackback | Comments(0)

レミフェンタニル投与後の鎮痛法(フェンタニルのtransitional opioid)

ちょうど原稿を書いたこともありレミフェンタニル投与後の鎮痛法について考えてみる。
まず、フェンタニルのtransitional opioidについて。

超短時間作用性のオピオイドであるレミフェンタニルの投与後には、中時間あるいは長時間作用性のオピオイドを投与しておいてから覚醒させることが勧められている。これをtransitional opioidという。もちろん、術後痛がNSAIDsで充分コントロールできる低侵襲の手術や硬膜外麻酔などの神経ブロックでコントロールできる場合は必ずしも必要ない。

そこで体重50kgの患者に100μgした場合のシミュレーション(図の上)。100μgの1回投与ではフェンタニルの効果部位濃度は30分程度で1ng/ml以下に低下する。これでは手術終了時に投与したとしても、病室へ帰室したときには痛みがでてしまう。
そこで、100μgの投与後50μgを30分ごとに2回投与した場合を示す(図の下)。こちらの方が濃度低下は若干緩徐になる。実際にはこの程度のフェンタニルとNSAIDsの併用は、開頭手術後などであれば比較的有用だ。

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もう少しフェンタニルの投与量を増やしてみる。
手術時間を3時間として、手術開始時にも100μgを投与した場合(図の上)。
あるいはもっと分かりやすく、術中TCIで2ng/mlで投与した場合(図の下)。これだと1ng/mlに低下する時間はまさにCSHTになるので分かりやすい。図は3時間投与した場合だが、当然投与時間が長くなればもっと緩徐に濃度は低下する。これで不足する術中の鎮痛をレミフェンタニルで補うことになる。尚フェンタニルのTCI投与は、TivaTrainerのIVAssist機能でほぼ実現できる。

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このようにフェンタニルの使用になれた麻酔科医の場合、それなりの量のフェンタニルを併用している人が多いのではないだろうか?

次は、持続静注への移行について。
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by yamorimo | 2008-01-22 23:32 | 術後鎮痛 | Trackback | Comments(0)