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TIVA再入門その②アンケート結果から

昨年の術中覚醒アンケートの結果で注目すべきは、やはり術中覚醒例24例のうちTIVAで行われていたものが21例もあったことでしょう。この結果をどう考えるかです。少なくともTIVAは術中覚醒が多いから危険だと考えるのは早計です。ただしこの結果はTIVAを実践している上で多くの示唆を与えてくれると思います。

まずいえるのはセボフルランでの術中覚醒は非常に少ないということがいえると思います。1例はセボフルラン0.8%で維持されていた症例。もう1例は気化器内のセボフルラン切れですから1%以上のセボフルランを使い適宜レミフェンタニルを併用しておけば術中覚醒はまず起こらないといえます。

TIVAの場合は、まずルートトラブルが原因と考えられる症例が3例ありました。ここは最も注意しないといけないポイントです。また肥満患者に標準体重を元にTCI投与し覚醒していた例が1例あります。肥満患者への投与についてはまた改めて考えたいと思いますが、基本的には実体重を元に投与すべきと考えています。

それ以外はやはり麻酔薬の不足ということになろうかと思います。コメントで多かったのはTCIとBISへの言及です。ハードとソフトではないですが、今後の内容としてはいかにTCIとBISを活用してTIVAを行っていくかがメインのポイントになると思います。

基本的にはプロポフォールで麻酔すると術中覚醒が多いということはないと思います。Glass らの論文(Bispectral analysis measures sedation and memory effects of propofol, medazolam, isoflurane, and alfentanil in healty volunteers. Anesthesiology 1997; 86: 836-47)でみると同じBIS値で記憶を抑制する効果はプロポフォール>イソフルランとなっています。要は使い方の問題だろうと。
ポイントは、TCIでプロポフォールを投与した際の適正な目標血中濃度に個人差が大きいことで、ここの見極めができなければ術中覚醒や覚醒遅延を起こしてしまうということになります。セボフルランでは1-1.5%程度でほぼ適正な鎮静度といえますが、プロポフォールではもっと幅が広くなります。

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これは私がTIVA(プロポフォール-レミフェンタニル)で麻酔した80例分の維持プロポフォール濃度を示したものです。1.5μg/mlから4μg/mlまで幅広く分布しています。

この辺りの設定の考え方を次回から説明してみます。
by yamorimo | 2010-02-18 23:33 | 電脳麻酔学入門
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