remote preconditionaing

臓器の虚血に対して、軽微な虚血侵襲を与えておくとその後の致命的な虚血に耐えることができる現象をischemic preconditioningと呼ばれる。虚血侵襲以外に薬物でも誘導することができるのはCABGでのセボフルランなどで知られている。
虚血侵襲を体内の別の部分で行っても効果がみられこれをremote ischemic preconditionaingという。
今回紹介するのは頸椎の手術において上肢でのremote ischemic preconditionaingが有効だったという論文である。
Effects of remote ischemic preconditioning on biochemical markers and neurologic outcomes in patients undergoing elective cervical decompression surgery.
J Neurosurg Anesthesiol 2010;22:46

対象と方法
頸椎症にたいて手術をおこなう40例をremote ischemic preconditioning(RIPC)群と対照群に分けた。
RIPC群では麻酔導入後に、右上肢を200mmHgの駆血帯で5分間の虚血を3回行った。
麻酔はミダゾラム、プロポフォール、フェンタニルで導入してプロポフォールとレミフェンタニルで維持した。挿管はグライドスコープを用いた。
術中はSEPをモニタした。術中から術後のS-100βとNSEの変化。術後の神経学的回復を検討した。

結果
SEPの変化には群間差はなかった。
神経学的所見(JOAスコア)は、術前は差がなかったが術後の回復度はRIPC群で良好だった。
術後のS-100βとNSEは対照群で有意に上昇していたが、RIPC群群では上昇が抑制された。

考察
これまでRIPCの効果は心筋で検討されてきた。今回の研究は脊髄障害に対するRIPCの効果を示した初の研究である。
RIPCの機序にはアデノシン、ブラディキンン、活性酸素などが考えられている。RIPCは脊髄虚血でも有効である可能性がある。


心臓でのRIPCについては、
Br J Anaesth 2007;99:611を参照して下さい。

私見
この程度の虚血侵襲でよいのであれば、CABGや下大動脈の手術、脳動脈瘤クリッピングなどでは上肢虚血によるRIPCを行ってみる価値はありそうだ。追試を待ちたいというところだろうか、、
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by yamorimo | 2010-01-15 23:20 | 麻酔 | Trackback(1) | Comments(2)
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Tracked from 忘らるるこそ我が本懐と心得 at 2010-01-18 18:15
タイトル : リモート・プレコンディショニングについての雑感
remote preconditionaing yamorimo先生のところで、リモートプレコンディショニングについての 興味深い報告が紹介されていました。 (人生初のトラックバック、  失礼な点がありましたら何卒ご容赦ください) リモートプレコンディショニング(RPC)とは諸先生方ご存知のとおりですが、 イベントに先行する軽微な虚血 (=よくあるのは上肢にマンシェットをまいておいて [5分ぎゅーっと締める+5分開放する]×3~4サイクルとか) を加えておくことで、 その後...... more
Commented by kmuranaka at 2010-01-17 09:09 x
J Neurosurg Anesthesiol は読む機会がないので、とても参考になりました。上肢の駆血で効果があるなら、マンシェットで血圧測定すれば知らない間にRIPCができていた可能性もあるのでしょうか?興味深い論文ですね。
Commented by yamorimo at 2010-01-17 12:14
虚血侵襲は5分間ですから普通のターニケットを使った方がよいと思います。これを5分のインターバルで3回です。
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