講演スライドを流用してレミフェンタニルの投与法について考えてみる。
麻酔科医にとって持続静注という形で薬剤を投与することはこれまでにもあったのだがレミフェンタニルに関しては今のところうまく使えていないように思う。 手術開始時に0.2μg/kg/minでスタート、ところが血圧が上がってくるので0.25→0.3と上げていき気がつくと効き過ぎていて血圧低下一気に下げると、今度は下げすぎてまた血圧上昇、これの繰り返しでジェットコースターのような麻酔記録になるパターンである。やはりレミフェンタニルの薬物動態についてある程度の知識がないとこの様な麻酔になりやすい。 神奈川での講演で会長からいただいたご指示に、レミフェンタニルの使用にTCIは必要かという項目があったのだがまさに問題点を見据えたよいご指摘だと感じた。ディプリフューザーの様なポンプがあれば上記の問題はかなり解決されるに違いない。 持続静注中に投与速度を変更しても次の投与速度で血中濃度、効果部位濃度が安定するには15分程度は必要になる。 つまり通常の方法では投与速度を変更した場合には15分程度待ってからこの投与速度でよいか評価して次の速度を決めるとよいのだが手術中では間に合わないことも多いだろう。また効かない効かないとどんどん投与速度を上げると、これでいいと思ってもまだまだ血中濃度が上がるかもしれない。投与速度低下時も同様である。この図は麻酔導入から手術執刀までの投与例だが、気管挿管後投与速度を低下させても以外に濃度が低下しておらずここで血圧が下がるかもしれないし、執刀前に投与速度を上げているはずだがこれも濃度上昇が追いつかず血圧上昇をみるかもしれない(赤色:血中濃度、緑色:効果部位濃度)。TCIを使えばマニュアルの投与よりも濃度変化は急激でより調節しやすい。 実際に手術中のレミフェンタニル投与に関してTCIの方が術中の循環変動が少ないという報告もある(Anesth Analg 2003;96:33)。ただ問題はレミフェンタニルのTCI投与が可能なポンプが日本未発売ということで現在のところ研究目的以外ではお勧めしにくい状況にある。 そこでどうしたらよいのか。 TCIでは濃度を上昇させるときは一時的に急激に投与、低下させるときは一時停止する。この手法をマニュアル投与でも使えばよい。 レミフェンタニルのCSHTは約3分なので、投与を3分停止すれば血中濃度はそれ以前の半分に低下する。0.5μg/kg/min→0.25μg/kg/minと変化させるときには投与停止3分を加えるだけで濃度低下はよりすみやかになる。3分を測るのはもちろんキティーの砂時計ということになる。もちろん低下させたい度合いに応じて1停止時間を調節すればよい。 次に濃度上昇の場合。 ここでは2倍の投与速度を使う。0.25μg/kg/min→0.5μg/kg/minと変化させるときは0.25μg/kg/min上げるのだから2倍の0.5μg/kg/min変化させる。そこで間に0.75μg/kg/minで3分投与すればよりすみやかに濃度が変化する。 濃度上昇の場合はより急激に濃度を上げたい場合がある。術中鎮痛の不足で体動がみられたり、脳外科でピン固定をする直前などでは1μg/kg/minで1分投与すればよい。 最後に実践例。麻酔導入~執刀をこの3分ルールで投与した例を示す。 ポイントは投与のメリハリを付けることと、3分を忘れないことだ。少しうるさいが100円ショップのキッチンタイマーなどが最適と思う。
by yamorimo
| 2009-02-11 20:39
| 麻酔
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