抗凝固薬と麻酔管理②

術後の抗凝固療法について考えるときにまず読んでおくべきなのはこのEXPERT studyである(Anesth Analg. 2007 Dec;105(6):1540-7)。
下肢の整形外科手術患者を対象にして、アリクストラ投与と硬膜外あるいは末梢神経ブロックのカテーテル抜去について調べたstudyである。

18歳以上の下肢整形外科手術を対象とした。
アリクストラの投与は術後6-12時間後から1日1回投与(2.5mg)とした(日本の適応と違うことに注意)。投与期間は術後3-5週間とした。カテーテルを留置した患者はアリクストラの投与を1日スキップして、最後の投与の36時間後にカテーテルを抜去して、その12時間後に次のアリクストラを投与した。

結果
5704例の患者が対象となった。
24%がTHA、40%がTKAで6%が骨折だった。
硬膜外カテーテルが留置されたのは27%、深部の持続末梢神経カテーテルが留置されたのは1.4%、浅部の末梢神経カテーテルが留置されたのは7%だった。カテの抜去は術後1~2日後が43%、3~6日後が57%だった。
術後の静脈血栓症の頻度はカテ+患者で0.8%、カテ-患者で1.1%だった。カテの抜去時期で血栓症の頻度に差はなかった。致死的な肺塞栓症の頻度はカテ+患者で0.1%、カテ-患者で0.2%。術後出血の頻度はカテ+患者で0.5%、カテ-患者で0.9%だった。カテ留置による血腫などの合併症はなかった。

やや勝手な結語
この研究から硬膜外カテーテルを留置した患者にアリクストラを使用しても使用を1日スキップしてその日にカテーテルを抜去することで、安全にしかも有用性を損なうことなくカテーテルを使用することができた。

私見
このプロトコールで日本でも硬膜外鎮痛を行うことができると思うのだが、日本とは投与開始時期が違うのでいつ抜去するのかが問題となるかもしれない。
手術当日(day0)
翌日(day1):アリクストラ投与1回目
day2:アリクストラ投与2回目
day3:アリクストラ休薬、カテ抜去
day4:アリクストラ再開
だと3日間硬膜外が使用できる。あとはこのプロトコールでよいのか?日本でも多施設研究が必要かもしれない。

尚、このstudyの結果はあくまでもひとつの報告であり、1日スキップしたから絶対安全というものではない。実際にどうするかは個々の施設での判断してもらうことにはなるのだろう。
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by yamorimo | 2008-07-21 00:45 | 麻酔 | Trackback | Comments(0)
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