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ビーチチェアー位と脳灌流

本日は研修医の先生とラパコロンの麻酔。気腹して頭低位にしたら明らかに顔が赤い。一応これで脳障害がでた報告はまだないよという話をしながら無事に終了した。

その後届いていたAPSFのニューズレターに、ビーチチェアー位は脳灌流を低下させるかもという記事が掲載されている。

47歳の女性が肩の関節鏡が予定された。既往に高血圧。術前の血圧は125/83mmHg。麻酔導入前に50mgのlabetanolが静注された(これは海外では常識なのだろうか?)。
プロポフォール、サクシニルコリンで導入後、2%のイソフルラン(こんな濃度使ったことがないが)と66%の亜酸化窒素で維持された。体位は、barber shop position(beach chair positionの別名らしい)。手術中の収縮期血圧は80-90mmHgで経過した。
ところが術後患者は覚醒しなかった。術直後のCTでは異常なかったが5日後には脳浮腫がみとめられた。最終的に植物状態になった。
記事には足背動脈で血圧モニタを行って術中低血圧麻酔を行った症例が同様の経過をたどったことが掲載されている。

まず脳の自己調節の下限は高血圧患者では80mmHg前後であることが考察されている。
次に上腕で血圧を測定した場合、脳での血圧と解離があることが指摘されている。上腕のカフの位置と外耳道の位置の差を計測し、1cmあたり0.77mmHgの差があることを認識する(通常8-24mmHg)。
あとは頭の位置が内頚動静脈の灌流を妨げないこと、肩の関節鏡に空気や二酸化炭素を使う場合は空気塞栓に注意するなど。

こんな症例報告をみると自分もニアミスは何度もしているように思う。単に血圧低下だけでなく、頭位などいろいろな要因はあるだろうが、ビーチチェアー位では血圧は高めにというのは注意しておこう。

モニタするとするとBISくらいだろうか?ただ軽度の脳灌流に対する感度はよくない。
by yamorimo | 2007-09-10 21:46 | 麻酔
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