昨年のJ-SIVAで講演したが、我が家の近くにセボフルランの製造工場がある。患者さんの中にもうちで作っているセボでと指名される人もたまにいらっしゃる。A and Aの今月号にセボフルランについての
話題が掲載されていたので紹介してみたい。
現在セボフルランは、アボット(丸石)とバクスターの2社から供給されている。この2つはまず製造法が異なっている。Hexafluoroisopropanol(HFIP)からアボット製はsingle-step processでバクスター製はthree-step processで製造される。どちらも製品には99.99%以上のセボフルランが含まれるが、不純物の比率は製造工程の違いから多少異なっている。これらは臨床使用上の違いはなさそうである。
次に、セボフルランは製造後、容器中で分解されるという問題がある。これはルイス酸(電子対受容体として定義された酸の呼称)依存性の脱フロン化と推測されている。この結果、HFやSiF4が産生される。従来のガラス容器には、SiO2, CaO, Na2O, Al2O3や少量の酸化金属(容器の色や紫外線防止に加えられている)が含まれており、特にAl2O3はルイス酸としてセボフルランを分解し、HFが次いでHFとSiO2の反応でSiF4が産生される。
セボフルランの分解は最初に、臭いで気付かれた。幸いにしてHFの濃度は環境基準以下であった。基準では、3ppm8時間以下であるが、0.04ppmくらからは臭いで感知できる。
分解を避けるため、最初の方法はルイス酸阻害薬を製品に含ませることが検討された。結局、水が有用であり、330ppmの水分を含有させた、water-enhancedセボフルランに改良され特許申請された。しかし、水は製造工程で産生されるため130ppm以下の水を含有するバクスターの後発品はアボットの特許を侵害していないと判断された。
次に容器の改良が考えられた。
バクスターはアルミ容器を使用した。アルミの表面には酸化アルミニウムが形成されセボフルランを分解する可能性があるが、epoxyphenolic resinの表面加工をすることで防いでいる(おそらく通常の食品のアルミ缶も同様の加工がなされている?)。
アボットはプラスティック容器にすることを選択した。プラティック容器には気体を透過する、熱に弱いなどの欠点があるが、ァポットの開発したpolyethylene naphthalateはセボフルランに使用できることが証明されている。
という訳で知らない間にセボフルランも改良されていることを知って驚いた。対策はなされているとはいっても、セボフルンの補給時には変な臭いがしないか確認するとよいのかもしれない。