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吸入麻酔薬の薬物動態:脂肪の影響

 Tubokawa先生が、吸入麻酔薬の薬物動態に及ぼす脂肪の影響について非常によい文章を書かれているので少しfollowしておきたい。
 諏訪先生のファルマコキネティクスの本には、麻酔の維持中には何が起こっているのかについて、麻酔時間4時間では筋肉コンパートメントがほぼ飽和する。この時点では脂肪コンパートメントの麻酔薬分圧はまだ低く覚醒に影響を与えるのは筋肉であるとTubokawa先生と同様の結論が既に書かれている。
 比較的最近の教科書では脂肪の影響についてこのように書かれている。
 筋肉コンパートメントでは血液と平衡に達するのに2~4時間を要する。
 脂肪組織ではさらに長い時間がかかり、そのため肥満患者などで麻酔時間が長時間に及べば脂肪へ分布する麻酔薬量が増加し覚醒に影響を与える。
 
 多くの麻酔科医はこんな感じで理解してしているのではないだろうか?しかし脂肪へ麻酔薬が分布するのに時間がかかるということは、逆にいえば覚醒時にもゆっくり血液に戻ってくるはずで覚醒に影響するというのはどうなのか。 

 ここでTubokawa先生に倣ってシミュレーションしてみる。さすがに大先生のソフトではなく市販のGasManを使ってみよう。
 まず、諏訪先生に倣って、エンフルランでやってみる。最初の15分間は3.4%で以後8時間まで2%で吸入後中止した場合。ガス流量は4L/分とした。

 
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おおよそ、諏訪先生の本の図と同じ結果。筋肉組織(MUS)では4~6時間でおおよそ平衡に達する。8時間後の脂肪(FAT, 黄色)での麻酔薬濃度は0.37%、10時間後でも変わらない。肺胞濃度は、10時間後で0.37%とやはりエンフルランは使いにくかったなと思わずにはいられない。

 次にセボフルランの場合。

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 セボフルランの場合、意外ではあるが血液から筋肉や脂肪への分配は遅くなる。脂肪組織での8時間後の濃度は、0.30%とエンフルランの場合より低く10時間後も変わらない。また筋肉への移行もエンフルランよりも遅いのが分かる。

 やはり比較的長時間の麻酔でも覚醒に関する脂肪の影響は少ないと考えられる。また、エンフルランなどの時代に考えられていたよりもセボフルランではさらに少ないということが分かる。

 それでは実際に肥満患者で覚醒が悪いと感じるのは何故だろう。
 ひとつには、肥満患者では覚醒時の換気量が少なくて麻酔薬のwash outが悪くなっている可能性が考えられる。特に早めに自発呼吸を出すとその傾向は強いだろう。覚醒と呼吸の問題はまた時間があれば紹介したいが、「今日から実践できるVIMA」の中でnagata先生がGasManを使ってうまく紹介されている。
 あとは筋弛緩薬の相対的な過剰投与の可能性。いずれにしても肥満患者の麻酔は難しい。

結論:やはり脂肪は敵かも?(結論だけ逆らってみた)
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by yamorimo | 2007-05-05 09:05 | 麻酔 | Trackback | Comments(0)
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