高齢者のTIVA

先日の続きで今回は高齢者のTIVAについて。

高齢者ではプロポフォール、レミフェンタニルともに若年者とは少し投与を考える必要がある。

まずプロポフォール。
高齢者ではプロポフォールの必要量が減少する。長田先生が講演でも話されていたが特に80歳を過ぎると顕著に低濃度で維持できる印象がある。私の昨年の講演では86歳の開腹術を1.2μg/mlで維持した症例を呈示した。
一方で高齢者ではどこまでBISモニタやTCIポンプが正確なのかという問題もある。これは私見であるがプロポフォールの目標血中濃度は低めで始めてゆっくり導入、患者の就眠時の効果部位濃度を指標に麻酔する方がよいと考えている。

次に、レミフェンタニル。講演でもあったがレミフェンタニルの場合も高齢者ではいろいろな変化がある。
まず、薬物動態。レミフェンタニルの薬物動態パラメーターとして使われているのはMintoモデルだが、これは体格や年齢に影響を受ける(lean body massを使用)。高齢者では同じ投与速度であっても濃度が上昇してしまう。しかし、血中から効果部位への移行速度は高齢者ほど低下する。従って麻酔導入時には高齢者であっても効果部位濃度の上昇は若年者と同じという結果になる。

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実際には心拍出量の減少もあるのでシミュレーションよりも濃度上昇が遅れる可能性もある。若年者よりも挿管を1分くらい遅れておこなうのもよいかもしれない。
あと、不明なのは若年者で気管挿管時の循環変動を抑制するのに必要な6ng/mlという濃度が若年者と同じなのかという点である。感受性が高くなっている可能性もあるし、逆に動脈硬化などで血圧は上がりやすいということも考えられる。

総合的に考えると、レミフェンタニルの投与速度は最初の3分くらいは若年者と同様でよいが、そこですぐに投与速度を下げる。特に気管挿管後は投与速度を0.1μg/kg/min以下にしておいた方がよいだろう。
あとは血圧低下への対応で、導入前に十分な輸液をしておくことと、フェニレフリンをあらかじめ準備しておくとよいだろう。

いずれにしても高齢者へTIVAは若年者で経験を積んだ麻酔科医が行うべき麻酔法である。まずは80歳までに症例で経験を積んでから望んでいただきたい。
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by yamorimo | 2013-03-20 23:05 | 麻酔 | Trackback | Comments(0)
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