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全身麻酔中の脳波変化⑥

Anethesia

全身麻酔と自然睡眠の違いは疼痛刺激に体動がないことである。
EEGは疼痛刺激に対する体動の有無の指標としては信頼性が低い。PEEGI(BISなど)が低値でも体動が起こりうるということは、麻酔中の無動とは麻酔薬の脊髄への作用に関連している(大脳ではなく)ことを示している。脳波は麻酔薬の脊髄への作用をモニタしない。もし患者が前投薬を充分に投与され睡眠状態であれば、pEEGIは低値となる。もし疼痛刺激が加えられれば、患者は覚醒しEEGは完全に変化するだろう。一方で亜酸化窒素やオピオイドを投与されていると、筋弛緩薬を投与されていなくてもpEEGIが比較的高値でも体動がみられないことから、これらの麻酔薬はEEGにあまり影響を与えないことを示している。亜酸化窒素やオピオイドは脳への入力を減らして麻酔下での体動を減少させる。
イソフルランを単独でBIS40を目標に使用された場合は疼痛刺激により50%で体動がみられる。オピオイドとイソフルラン、プロポフォール、亜酸化窒素がBIS40を目標に投与された場合は、体動の確率は10%以下である。

紡錘波と背景の徐波(δ波)は麻酔下での最も重要な脳波所見(Fig 4)である。麻酔深度が深くなると紡錘波はより徐波になり、長時間になる。(おそらくδ波優位になるといいたいのだろう)脳波の例はこちらにある。

手術開始時には脳波変化に注意する。疼痛刺激は脳波を大きく変化させる(Fig 5)。この例は、イソフルラン-フェンタニル麻酔で大きなδ波と紡錘波がみられていたものが、手術開始によりδ波が消失してしまっている。この場合は麻酔深度を少し深くする必要がある。疼痛刺激による脳波変化は時々逆に、δ波を増加させることがある(Fig11)。

覚醒~麻酔深度を深くしたときの脳波変化はこちらにある。

高用量の麻酔薬により群発抑制として知られる脳波となる(Fig 6)。これは紡錘波あるいは早いスパイク状の脳波の時期と平坦脳波が交互にみれらる。群発抑制は深麻酔を示し通常はこのレベルまで麻酔深度を深くすることはない。しかし、脳保護目的で脳代謝を抑制する場合は指標となる。

さらに深麻酔にすると平坦脳波となる。平坦脳波はニューロン間の連絡が完全に断たれていることを示す。群発抑制では通常意識消失と疼痛刺激に対しても無動を示す。通常、血圧低下、麻酔からの覚醒遅延、麻酔薬の消費量増加を来たす。
by yamorimo | 2011-02-20 23:27 | 電脳麻酔学入門
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