pnbsiva先生のブログに大腿骨頸部骨折の麻酔を大腿神経ブロック+脊髄くも膜下麻酔で行う方法を紹介されています。
作用発現時間を考えて体位変換することと、大腿神経の支配領域を意識して脊髄くも膜下麻酔の麻酔レベルを確認するというのが分かっていればよい方法だと思います。 私は全国の麻酔科医の中でも高齢者の骨折系の手術の麻酔はよく行っている方だと思いますが、大腿骨の頸部や転子部骨折の麻酔は術前にヘパリンを使用していたり、プラビックスの休薬ができないまま手術という症例が増えてきたこともあり全身麻酔で行うことが多くなってきました。全身麻酔の場合は、脊髄くも膜下麻酔と比べると術後の鎮痛という面で不利ですので大腿神経ブロックを併用します。 ハンズオンなどでブローブを清潔操作で使う方法からきちんと指導していますが、この場合は簡略化して行っています。 高齢者の大腿神経ブロックの場合、 全身麻酔後に施行 アルコール綿でプローブと大腿部をよく清拭しゼリーを使わずにプレスキャン ブローブの外側2~3cmの部分を中心にイソジン消毒 10mlの注射器に0.375%ロピバカインを12ml入れて23Gのカテラン針を装着 ブローブの外側2~3cmから穿刺 神経の外側、大腿筋膜の下面にロピバカインを6ml注入 注入しながら針を引き抜いていき、プローブの外側ぎりぎりの位置で残りのロピバカイン全量を投与(外側大腿皮神経ブロックを意識) という感じで、プローブにカバーを付けるのを省略して短時間にブロックを施行しています。 ブロック針もカテラン針を使いしかも1人で行えるのが利点です。その分神経にはあまり近づけないで局所麻酔薬を投与します。 針をブローブから離して穿刺することで角度はプローブに平行に近くなりカテラン針でもよく確認できます。 麻酔は高齢者の場合、チオペンタール2-3mg/kgとロクロニウム30mg程度で導入し、LMAを挿入します。側臥位の人工骨頭でも同様です。側臥位の場合は位置がずれないように胃管を挿入しておきます(LMA Supreme or i-gel)。チオペンタールを使用するのはプロポフォールよりも血圧が下がりにくい印象があるためです。このためLMAの挿入を容易にするために筋弛緩薬を併用します。 術中は1%のセボフルランと0.1μg/kg/min程度のレミフェンタニルで維持します。90歳くらいだとセボは0.6%くらいにしています。人工骨頭では骨頭の抜去時などブロック効果が不十分な部分がありますが、このときはレミフェンタニル増量で対応できます。 皮膚縫合時にはレミフェンタニルを中止し、セボフルランを0.6%にしておけばあとは必要に応じてスガマデックスを使用するだけですぐに覚醒します。 脊髄くも膜下麻酔とは一長一短ですが、術後の鎮痛効果は優れていますので、呼吸に問題がない患者には優れた方法だと思います。所用時間2分程度ですが、術後の状況はまったく違います。 THAの麻酔もほぼ同じコンセブトで可能です。ブロックは坐骨神経ブロックの臀下部か傍仙骨アプローチも併用します。 あくまで中~上級者向けのお手軽な方法ということでお試し下さい。 カテラン針と10mlの注射器によるブロックは、坐骨神経ブロックの膝下などでも有用です。
by yamorimo
| 2011-02-11 17:37
| PNB
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