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麻酔深度と術後の認知機能障害

臨床麻酔学会で講演したときに、
手術執刀前に低用量のレミフェンタニル下でBIS値が40-50になるようにプロポフォールを調節する。
術中高用量のレミフェンタニルを使用するとBIS値は30台になることもあるがプロポフォール濃度は下げない。
という点を強調して発表した。
講演後の質疑応答で、BISが低値だと患者の予後がよくないという報告があるがどうかという質問があった。
この種の研究の解釈は難しいが、少量のオピオイドと高濃度の吸入麻酔薬での話と、バランス麻酔としてのTIVAでは意味が違うので気にしなくてよいというお答えをさせていただいた。
術中のBIS値をどの程度にしたらよいのかは麻酔の方法にもよると思うのだが、面白い研究をみつけたので紹介する。

Deeper total intravenous anesthesia reduced the incidence of early postoperative cognitive dysfunction after microvascular decompression for facial spasm.
J Neurosurg Anesthesiol 2011;23:12-17

顔面痙攣に対して神経血管減圧術をうける患者96名を対象に、2群に分けた。

deeper anesthesia群:目標BIS30-40
lighter anesthesia群:目標BIS55-65

どちらもプロポフォールとスフェンタニルで導入し、レミフェンタニル0.1-0.2μg/kg/min(論文にはhとあるがミスだろう)とプロポフォールで維持した。

術前と、術後に9種類のテストを行い、2種類以上で術前と比べて低下がみられたら術後認知障害ありと判定した。

(結果)
認知機能障害の頻度はdeeper群で10%、lighter群で27.5%とdeeper群で有意に低かった。
lighter群でも術中覚醒記憶のある患者はいなかった。
lighter群ではプロポフォールの使用量は有意に少なく、レミフェンタニルの使用量(medianは同じなのだが、、)も少なかった。

私見
この結果は脳外科手術という脳神経系の手術ではあるが、しっかり麻酔した方が中枢神経が保護されるという当たり前の結果を示している。
術後の覚醒の状況に差があったのかどうかはデータが示されていないが、TIVAではBIS30台で維持しても安全だよという根拠のひとつにはなるだろう。

追試を行ってみたいが、うちの病院はこの手術は多いのだがせいぜい年間20例くらいであり数年はかかりそうだ。
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by yamorimo | 2011-01-16 00:34 | 麻酔 | Trackback | Comments(1)
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Commented by 英子 at 2012-03-29 15:21 x
顔面痙攣について調べていたら、行き着きました。
貴重な情報を、あ利が問うございます。
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