BISモニタを使用する際には数字よりも波形が大切だよといつも強調しているのだがなかなか浸透しないのが現状である。丁度よい総説があるのでこれを抄訳しながら全身麻酔中の脳波変化についてまとめてみたい。
ネタ元はこちら。波形などはこの総説を利用するのでまずはコピーを入手してからよんでいただきたい。 Bennett C, et al Practical use of the raw electroencaphalogram waveform during general anesthesia: The art and science Anesthesia and Analgesia 2009;109:539 この総説のねらいは全身麻酔中にみられる一般的な脳波変化を理解してもらう教育的ツールを提供することにある。1990年代の初期から多くのquantitative EEG monitor(qEEG)が開発されてきた。これらはいずれも数字(qEEG index)を表示する。この種のモニタとしてはBISとエントロピーモニタが一般的に使用されている。これらのモニタの使用により術中覚醒の頻度が低下したり、全身麻酔からの回復が早くなることが示されてきた。多くの状況で、麻酔をこれらのモニタが推奨する数字にあわせて調節することで適切な麻酔状態を得ることができる。しかしながら多くのモニタと同様に誤った数字を示すことがある。Aspect Medical Systemのサイトにはこのように記されている。 It is important to emphasize that reliance on BIS monitoring alone for intraoperative anesthetic management is not recommended. Clinical judgement is crucial when interpreting BIS data. The BIS value is an additional piece of information to be incorporated with other information available for patient assessment. 患者の生理学的状態や病態、さらに投与された薬剤や手術の状況はqEEGIに影響する。qEEGIが誤った数字を示す多くの状態は脳波波形から判断することができる。 我々は短時間のレクチャーで麻酔科医が脳波波形から全身麻酔の状態を判断できることを示してきた。15分のチュートリアルで麻酔科医は脳波波形からBISやエントロピーモニタと同様に、覚醒、鎮静そして麻酔状態を判断することができた。 この総説はqEEGモニタを非難するのものではない。しかし予期しないqEEGIに遭遇した際に、予想されるEEGパターンや共通のアーチファクトについて知っておくのは必要なことである。EEGモニタを使用する麻酔科医は脳波波形を正しく評価できる能力が必要である。 (解説) 今回はイントロの部分だが重要なコンセプトが書かれている。BISの成功は難解と思われている脳波の解釈を0-100の数字で表現したことにあるのだが逆に数字が一人歩きしている感がある。そしてこの総説のような全身麻酔中の脳波変化について詳しく書かれた文献が少なかったのも事実かもしれない。アスペクト社の言い訳は、発売元自身がBISの限界についてよく理解していることを示している。 次回は、回り道をして後半に出てきた著者らの研究について紹介してみたい。
by yamorimo
| 2010-12-13 17:53
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