セボフルラン vs デスフルラン①

風の噂ではそろそろデスフルランの発売が近いという。このところの話題は静脈麻酔中心だったのでここらでデスフルランとセボフルランはどう違うのか考えてみたい。もちろん私はデスフルランを使ったことがないのでシミュレーションと文献から考えてみるということになる。

まずセボフルランの特性についてはこちら(文献1)で復習を。デスフルランについてもこちら(文献2)が詳しい。

前回セボフルランについていろいろシミュレーションした内容ではセボフルランは導入、覚醒ともにイソフルランに比べて早く特に長時間の麻酔後の覚醒でその恩恵を感じることができるだろうというものだった。

デスフルランの場合、導入に関しては気道刺激性があるのでセボフルランのように単独での吸入で導入するのには向いていない。

では維持ではどうか?文献2にあるように生体への取り込みが早く速やかにFA/FIが1に近づく。つまり吸入濃度と呼気濃度の差が少ないということになる。

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この図はセボフルランは流量6L/min、セボ5%で5分間吸入後、流量を4L/minにしてセボフルラン2%で吸入を続けたときの、デスフルランは20%(この濃度はたぶんあり得ないのだろうが、セボとほぼ同等ということで設定した)で5分後7%で吸入したときのシミュレーションである。
ALV:肺胞、VRG:脳など、MUS:筋肉、FAT:脂肪組織

セボでは肺胞濃度が吸入濃度の75%程度なのに対して、デスフルランでは80%を超えている。この特性は低流量麻酔で生きてくるが、通常の臨床では呼気麻酔濃度をモニターしているのであまり関係ないかもしれない。
筋肉組織の濃度上昇もデスフルランが早いが、脂肪の濃度が上昇しないのは両者一緒である。

次に覚醒。
覚醒については文献1にも触れてあるが、context-dependent timeの概念が重要になる(ミラー556ページを参照)。
麻酔中の維持濃度から肺胞あるいはVRGの濃度低下は、元の濃度の60%程度までは麻酔薬の種類にあまり関係ない。80%になるとイソフルランはセボフルラン、デスフルランと比べて時間が必要になり、しかも長時間になるほど延長は著明である。90%になるとセボフルランとデスフルランで差が出てくるようになりしかもセボフルランは麻酔時間の影響を受けるようになる。
1MAC程度で麻酔を維持するとすれば、MACの70-80%程度まで呼気濃度が低下すれば覚醒するだろうから、セボフルランとデスフルランで患者の覚醒までの時間にはそれほど差は付かないのではないかと予想される。一方で覚醒後の患者の状態はデスフルランで良好だろう。例えば喉頭反射の回復にはMACから90%低下が必要である。また5-8%のMACの麻酔薬でも喉頭機能の障害が存在する。つまり術後に水を飲むといったレベルに回復するのはデスフルランが早く、長時間の手術ではそれが著明になると予想される。

実際に前掲の図で2時間麻酔後、流量6L/minにして麻酔薬濃度0とし覚醒の様子をシミュレーションしてみる。

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覚醒をVRGが0.25MACになる時点とすると、セボフルランは12分、デスフルランは8分でそれほど差はない。しかし、0.1MACに低下するのは、セボフルランは30分、デスフルランは20分と差がでてくる。

前掲の図をもう少し分かりやすく、0分のVRGの濃度を100としてその後の相対的な変化をプロットしてみる。
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やはりデスフルランでは覚醒が早いことが分かるがその差は大きくはない。実際には呼気のセボフルラン濃度を1.2%程度にして維持すればもう少し覚醒は早くなるので、2時間程度の麻酔ではデスフルランの恩恵を感じることはそれほどないのではないかと思われる。ただしMACの10%以下の低濃度までの低下はデスフルランが早いので、術後の飲水や認知機能の回復はデスフルランで少し早いという結果になりそうだ。

次回は麻酔時間を長くしたときのシミュレーションを紹介する。
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by yamorimo | 2010-10-13 00:21 | 電脳麻酔学入門 | Trackback | Comments(0)
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