発達期の脳とセボフルラン

発達期の脳とセボフルランについてNishikawa先生が講演されるということで日本小児麻酔学会に初参加してみた。
アボットと丸石製薬のランチョンという立場でどのようにまとめるのだろうと隣のO先生と話しながら拝聴した。私見を追加しながら私の理解した範囲を記載してみる。

麻酔薬の発達期の脳への毒性については、

neuroapotosisの増加
Paradoxical GABA excitation
臨界期への影響

の3つが考えられる。

apotosisについてはNMDA受容体拮抗薬に神経毒性があるということが1990年代から注目されてきた(ケタミン、亜酸化窒素など)。2003年にミダゾラムと亜酸化窒素、イソフルランでもapotosisが起こることが報告され麻酔薬と発達期の脳への影響が注目された。

Nishikawa先生の意見ではマウスを使った研究では挿管して人工呼吸が困難であるため麻酔時のhypoxiaの影響を除外できないことに注意が必要ということだった。

この分野でのサルを用いた研究では、生後6日目(ヒトでは6ヶ月に相当)をイソフルラン(0.7-1.5%)で5h麻酔したところ、麻酔後3hでneuroapotosisの増加(大脳皮質)が認められた。
ただしこの研究では認知・学習能への影響は検討されていない。

ケタミンをもちいた同様の研究では、ケタミンを9h以上投与するとapotosisが認められたが、こちらも学習能については検討されていない。

Nishikawa先生らはマウスを用いてセボフルラン1.5%吸入を12hを1日おきに3回行った(生後1日、3日、5日)。しかし、water maze試験では学習能に差はなかった。

次にParadoxical GABA excitationについて
発生初期には、GABA受容体は中枢神経に興奮性に作用し、このことが学習障害や行動異常を引き起こす可能性がある。今日の講演ではこのメカニズムはあまり関係ないのではということだった。

次に臨界期
臨界期で最もよく知られているのは刷り込み現象(imprinting)。鳥が初めて見た動く物を親と認識するというアレである。この刷り込み現象は生後24hまでである。このように中枢神経の可塑性は年齢により最大となる時期がある。
マウスでは生後7日目あたりが体性感覚野、30日あたりが視覚野の臨界期である。

この臨界期は興奮(glutamate)と抑制(GABA)のバランスで決定される。ベンゾジアゼピンでGABA系を増強すると臨界期が早くなる。
ヒトでの臨界期はよく分かっていない。Nishikawa先生のスライドでは体性感覚野が6ヶ月、視覚野が2-3歳、言語野が8歳くらいになっていた。これは大人になって留学しても英語が身につかないというアレですね
(従って、小児期に全身麻酔でGABA系を増強すると例えば言語の能力が向上しなくなるという可能性があるということだろう)。

一方で、新生児であっても充分な鎮静と鎮痛が必要であることが報告されている。

結論としてはこの領域ではまだ充分なエビデンスはない。とりあえずセボフルランは安全に使用できるのではないだろうか?

この後の質疑ではイソフルランはNMDA受容体拮抗作用がセボフルランよりも強いのではapotosisを起こしやすいのかもという話もあった。

次にTerui先生の話が続いたが比較的重複もあったので、今後この領域の注目すべき論文を少しずつ紹介してみたい。
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by yamorimo | 2010-09-18 21:37 | 麻酔 | Trackback | Comments(0)
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